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【朝晴れエッセー】9月月間賞 遥かな東京 竹田健次さん

 ≪話題にのぼった作品≫

■「さよならの夏」 寺前利香 56 奈良県大淀町

 私には忘れられない曲がある。いや、実際には何も覚えていないのだが、私が小学生の頃のドラマの主題歌だった。

 甘く憂いのあるメロディーで、岩下志麻さん主演のそのドラマが大好きだったのだが、大人向けの恋愛ものといおうか、少々刺激的な場面が多かった。

 毎回、母にさっさと寝るよう叱られ、一方的にテレビを消された。こっそり見ていて母が来ると慌てて寝たフリをしたが、バレていたらしくある日、ついにテレビを撤去された。

 それ以来、記憶の奥底に眠ったまま、さてどんな曲だったのか思い浮かべることもできなくなった。

 ところがだ。先日、次女のスマホからその曲が流れた。「あっ!」と絶句すると何と夫がワンフレーズだが、歌い始めたのだ。ナヌ!? 私が追い求めていた曲を夫が歌える? だが、なぜ歌えたのか、自分でも分からないという。

 思わず岩下志麻さんの出演作品を検索した。昭和50年代。共演は確か故細川俊之さんだったはず。あった! 嘘のように簡単に見つかった。坂田晃一さん作曲「さよならの夏」。この曲は近年カバーされ、時を超えアニメの主題歌になったらしい。

 便利な時代になったものだ。わずかな手掛かりから全てを知ることができた。その日以来、私は繰り返しこの甘美で切ない曲を聴いている。

 私が暮らしたあの子供部屋。ブラウン管の大きなテレビ。そして亡き母。懐かしく愛しい日々を思い出しながら。

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