PR

ライフ ライフ

【朝晴れエッセー】9月月間賞 遥かな東京 竹田健次さん

9月月間賞の選考を行う門井慶喜さん(左)と玉岡かおるさん=大阪市浪速区(安元雄太撮影)
9月月間賞の選考を行う門井慶喜さん(左)と玉岡かおるさん=大阪市浪速区(安元雄太撮影)

 朝晴れエッセーの9月月間賞に、竹田健次さん(76)=大阪市中央区=の「遥かな東京」が選ばれた。伊勢湾台風が日本列島を襲った直後、大阪の中学生だった作者が修学旅行で東京へ赴く。旅の途中に広がる災害の爪痕、五輪開催が決まった東京の発展ぶり、大阪から転校した憧れのマドンナとの再会…。多彩な話題を巧みにまとめた構成力や表現力が高い評価を受けた。選考委員は作家の玉岡かおるさんと門井慶喜さん、山田智章・産経新聞大阪文化部長。

 ≪受賞作≫

■遥かな東京 竹田健次さん(76) 大阪市中央区

 未来のタカラジェンヌやなあ、とうわさされたマドンナが東京へ転校したことと、修学旅行が中止になるかも、という衝撃のニュースが夏休みの明けた校内で流れた。

 1959年9月26日、名古屋方面を伊勢湾台風が襲ったのだ。中学3年のことである。10日後に東京へ修学旅行が予定されていた。この年から運行の始まった修学旅行専用列車「きぼう」の乗車が楽しみのひとつだっただけに、落胆は大きかった。

 半ばあきらめていたが、決行されることになった。東京、何するものぞ、という気分の強い時代だったが、めったにない大旅行に500人もの生徒は浮き立っていた。

 濃尾(のうび)平野に列車が入ると、太い丸太が水面に等間隔で突っ立っているのが車窓から見えた。架線の切れた電柱である。

 黒い瓦屋根が浮かぶ泥の海。鉄路だけが土手の上を真っすぐに延び、静寂の中に広がる荒涼とした風景。誰もが息をのんだ。

 東京は木造の家屋も多く、大阪と変わりなく見えた。

 でも、オリンピックの開催が決まり、真新しい国立競技場や東京タワーを目の当たりにした私たちは、大東京に変貌する節目にいたのかも。旅の終わりの余韻に浸りながら夜行列車の座席で発車を待っていると、窓際でみんなが騒いでいる。

 「M子さんや」。私服で大人っぽく見えるマドンナが、窓越しに旧友らと再会を喜び合っていた。列車が動き始め「さよなら」と誰かが叫ぶと大合唱に。

 あこがれだけで口もきけなかったけれど「さよなら!」。東京が他国ほどに遠く思えた、あのころ。

                   ◇

 ≪受賞の言葉≫

■ばらばらの思い入れを一つに

 夕刊の「夕焼けエッセー」から朝刊の「朝晴れエッセー」となり、全国からいい作品が寄せられています。月間賞の受賞は無理だと思っていたので、今回はとてもうれしいです。

 作品の題材となった修学旅行、伊勢湾台風、マドンナ、東京オリンピックは、私の中でばらばらにあり、それぞれに思い入れがあったものでした。2月6日付の夕刊で掲載された「時刻表は、読み物です。」(ニュースサイト「産経ニュース」にも掲載)で修学旅行専用列車「きぼう」が紹介された記事を読んで懐かしくなり、当時の校内新聞などを引っ張り出したらそれぞれがつながったのです。一つの作品にまとめるのは大変でした。

 今も仕事をしていて、周りの方々に大事に支えられて楽しく過ごしています。昔のことだけでなく、近況も書きたいと思います。

続きを読む

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ