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【本ナビ+1】学習院大教授・中条省平 極めつけの傑作ぞろい『短編ミステリの二百年3』

学習院大の中条省平教授
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『短編ミステリの二百年3』マクロイ、エリン他著、小森収編 直良和美他訳(創元推理文庫・1400円+税)

 今から半世紀前、私が中学生になって突然、推理小説の魅力に捉えられたとき、その歴史と名作を教えてくれた指南書が、江戸川乱歩編の『世界短編傑作集』(全5巻)だった。あのときの熱狂のせいで、私はいまも推理小説を読み続けているようなものだ。

 今は『世界推理短編傑作集』となって、全巻に戸川安宣(やすのぶ)の解説がついたので、旧版より的確に推理小説の歴史が分かるようになっている。

 そのリニューアル版の完結から1年もたたず、同じ創元推理文庫から小森収(おさむ)の編集で、『短編ミステリの二百年』という短編傑作集が出はじめて、仰天した。乱歩編の『世界短編傑作集』を受け継いで、その後の傑作を網羅しようというアンソロジーだ。

 全6巻の予定で、現在まで3巻出ているが、その厚さが尋常じゃない! 平均650頁(ページ)ほどで、何よりすごいのが解説。こちらは平均して220頁くらい。1巻につき、軽めの新書1冊ずつの解説が付いていると思えばいい。

マクロイ、エリン他著、小森収編、直良和美他訳『短編ミステリの二百年3』(創元推理文庫)
マクロイ、エリン他著、小森収編、直良和美他訳『短編ミステリの二百年3』(創元推理文庫)
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 いや、解説なら解きあかしてくれるはずだが、小森収の文章は論文といってもいい稠密(ちゅうみつ)さで、読めば読むほどミステリの森の深さに幻惑されてしまう。「ですます体」の平易な語り物で楽しく読めるが、なにしろ情報量が半端でなく、圧倒されてしまうのだ。

 ごく大ざっぱに中身に触れると、1巻が19世紀から戦前までの異色短編、2巻がハードボイルド勃興の時代の多様な作品、3巻が雑誌「EQMM」のコンテストを中心とした構成。むろん極めつけの傑作ぞろいで、ミステリファン必読だ。

 古典的な「推理小説」のありかたは早くからゆらぎ、今の「ミステリ」像が作られていった。その形成の現場が細やかに浮かびあがってくる。推理小説の歴史の常識にひびが入ることは間違いない。

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