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【朝晴れエッセー】漱石さんと目があった・10月14日

 実家の母が突然「断捨離」に目覚めた。私の物も多々あるらしく、手伝いに行くことにした。

 9月のまだ暑さが残るなか、「預かり物」と書かれた箱を開けると、かわいらしい便箋にカラフルな文字が並ぶ手紙が100通以上。昨今のような通信手段もない時代、中高生には「お手紙交換」が友情を育むにはなくてはならないものだった。

 一通読んでは笑い、一通読んでは、「あの子」って誰のこと? 手書きの年賀状も山のように出てくる。力作ぞろいだ。「やっぱり手書きって温かみを感じる…」などと言いながら作業をしていると、母が言う。「そんな調子やったら、日暮れるわ」

 汗を拭きながら、スピードアップ。箱の底に近づいてきたとき、その箱の年代に合わない小学3年生のときの写真が1枚。その下にシンプルな薄い茶封筒。

 念のためと封筒をのぞいたら、漱石さんと目が合った。「いや~、漱石さん出てきはった。3人も!」。私の声に母は「良かったやん! なんかおいしいもの食べに行けるやん」と笑顔。

 ハッとした。きっと父が私の思い出の品々を整理する際に入れてくれたに違いない。人を笑顔にするのが好きな人だった。

 違和感を覚える写真はサイン。うっかり茶封筒を捨ててしまわないための。いつか母娘でこんな作業をするときがくると見越していたのだろうと思う。

 箱はまだある…と思ったとき、母と目が合った。お互い同じことを考えていると悟った。どこからか諭吉様が出てくるかもしれない…と。

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