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【話の肖像画】女優・大地真央(64)(9)大切なこと「声」に教えられ

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女優の大地真央さん(萩原悠久人撮影)
女優の大地真央さん(萩原悠久人撮影)

 《一回一回が勝負の舞台で、主役を演じ続けてきた大地さんだが、一度だけ休演した経験がある》

 平成9年、東京・日生劇場での「クレオパトラ」(宮尾登美子原作)です。私にとって、人生最大の試練となりました。初日から1週間が過ぎたころ、2幕の最中に声が全く、出なくなってしまったのです。「アントニー」と叫んでも、息が漏れるだけ。声帯炎でした。

 私にとって、初めてマイクなしで臨んだ舞台でした。共演は亡き平幹二朗(ひら・みきじろう)さんと、文学座の江守徹さん。お二人とも朗々と台詞(せりふ)をおっしゃる方で、私もどのくらい声を張れば、日生劇場の最後列まで届くか分からず、無理をしていたのだと思います。しかも砂ぼこりやろうそくの煙が漂う傾斜舞台で、喉には過酷な環境のもと、石やビーズがびっしり付いた豪華絢爛(けんらん)な衣装を着て、出ずっぱりで台詞も膨大でした。

 ト書きには、「喉を振り絞るように叫ぶ」などと書かれていました。今なら「本当にやったら駄目」だと分かりますが、昔から役に入り込むと全身全霊でやるタイプ。ついに、声帯が悲鳴を上げたのだと思います。みなさんにご迷惑をおかけしてしまいました。

 《緊急入院先で医師に、「声を失うかもしれない」と手術を勧められたほど、状況は深刻だった》

 女優として致命的な事態に直面し、信じられない思いでした。「終わった…」という絶望感と、「いや、このまま終わるはずない」という思いとの間で、激しく揺れ動きました。東京公演の直後には、大阪松竹座公演も控えていました。それなのに1週間で、「クレオパトラ」を終わらせたくない。手術をすれば3カ月は声を出せません。声帯を休ませれば声が出るかもしれないという可能性に懸け、投薬治療を選びました。

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