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【話の肖像画】女優・大地真央(64)(8)イライザは20年来の「親友」

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女優の大地真央さん(萩原悠久人撮影)
女優の大地真央さん(萩原悠久人撮影)

 《自他ともに認める代表作が「マイ・フェア・レディ」のヒロイン、イライザだ。日本初の本格的ブロードウェー・ミュージカルとして昭和38年に初演され、大地さんは6代目のイライザ。平成2年から20年間で615回演じた》

 20年間、イライザをシングルキャストで演じた女優は世界でもいないそうです。この作品は、下町の貧しい花売り娘が上流階級の言語学者、ヒギンズ教授の指導で、半年でレディへと変身する-という単なるシンデレラ・ストーリーではありません。原作は(アイルランド出身の劇作家)バーナード・ショーの「ピグマリオン」で、非常に深い、英国の階級格差の話なんです。20世紀初頭のロンドンが舞台で、「H」を発音しないコックニーと呼ばれる下町なまりの英語を話すと、下層階級出身と分かってしまう厳しい現実が背景にあります。

 実はそれまでの日本版の舞台は、方言に置き換えていたようです。でも関西弁や東北弁だった娘が標準語を話せるようになったという設定は、薄っぺらいのではないか。その地域の人はみんな“下層”? という疑問も生じますよね。

 そこで私は、「H」を発音しない英語版の話し方を、日本語に取り入れようと考えました。ハ行のHを抜かし、「花」なら「アナ」と発音する、日本版イライザ語を発案したのです。すると、日本初演時からピッカリング大佐を演じてこられた、亡き益田喜頓(ますだ・きいとん)さんが「すばらしいアイデア」と、お褒めのお手紙を下さいました。

 《名作のオリジナル演出であろうと、無条件には受け入れない。納得いかない部分は改め、大地版イライザを作り上げた》

 映画でイライザを演じたオードリー・ヘプバーンも、最初の花売り娘の場面で、顔に汚しのメークをしています。でも、たった半年で王女様に間違われるほど変貌する娘なら、貧しくても向上心を秘めているはずです。ショーウインドーに汚れた自分の顔が映ったら、せめて袖でぬぐうでしょう。ですから私のイライザは、花売り娘時代も顔を汚さず、素顔っぽいメークです。海外の舞台も見ましたが、顔を汚さずに出たのは私だけだと思います。

 イライザの半年に及ぶ特訓の最中、衣装が変わらないのも疑問でした。「変貌の過程と時間経過を表すため、着替えが必要です」と主張したら、「誰も着替えてこなかったから不要」と言われました。「私は着替えます」と言って、20秒足らずで衣装替えです。イライザが教育されただけではなく、ヒギンズ教授も彼女から影響を受けた、という芝居まで持っていきたかったので、その過程を大事にしたかったのです。言葉や身なりがきれいになるとともに、心も大きく成長し、常に向上心を持ち続けるイライザを演じ、運命に立ち向かう勇気をもらった気がします。今も、親友のような存在です。(聞き手 飯塚友子)

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