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【朝晴れエッセー】産んでくれてありがとう・10月8日

 看護師業からしばらく離れて復帰し、老人福祉施設に勤務している。思い通り、思った通りにいかないことの連続、落ち込むこともある。

 施設利用者さまに不利益にならぬ様、日々の業務を新人に戻ったつもりで行い、自宅に帰ってから、好きな珈琲を飲みながら一息つき、一日の出来事を振り返り、考え込んだりする。

 そんな業務の日々を送っている中、家族、本人ともに自然な形の終末期を望まれた、90歳近くの女性利用者さまがいた。

 娘さんが利用者さまの臨終が近づく中、「産んでくれてありがとう」と何度も耳元で声掛けし、利用者さまもわずかな力を振り絞り、目を必死に動かし答えていた。同席していたスタッフも、私も、涙してしまった。

 臨終後、エンゼルケア(死後の処置)中、好きだった桜の香る温泉の素を入れて体を拭き、生前のお気に入りの服を着て、静かにお別れをした。

 自分の人生を振り返り、自分の母の終焉(しゅうえん)に立ち会うことができて「産んでくれてありがとう」と感謝の言葉が、母に言えるだろうか?

 今の自分には言えないと思う。言える人生を歩めるように、いつも心に留めておきたい。

 多忙な仕事ではあるが、「手で触り目で見て護(まも)る」という字のごとく、また利用者さまの心をくみ取ることができる看護師業を、人生の諸先輩方から指導を仰ぎながら、自分の健康にも留意しながら従事していきたい。

西田陽子 46 看護師 埼玉県川越市

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