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【島を歩く 日本を見る】若者がつなぐ、故郷の未来 松島(佐賀県唐津市)

松島の人口は約40人(平成27年の国勢調査)。本土から3・2キロに位置する小さな島だ
松島の人口は約40人(平成27年の国勢調査)。本土から3・2キロに位置する小さな島だ
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 過疎化や高齢化により人口減少の一途をたどる島は多い。例えば、入学や就職を機に島を出たきり帰ってこなくなる。「いつか」と郷愁を感じている間に、故郷はじわじわと消えつつあるのが現実だと感じる。

 佐賀県唐津市の玄界灘に浮かぶ松(まつ)島(しま)。故郷の未来に危機感を覚え、島出身の20代、30代がUターンののちに奮闘している。もともと無人島で、江戸末期に長崎からイカ釣り漁船でやってきた隠れキリシタンが移り住んだとされている。

 港の素朴な教会には、いかりと融合したような十字架がある。島民の多くはカトリックだ。若者は、「船で島を出るときが家の玄関を出るようなもの」と言う。島全体が「ホーム」であり、島民は家族的な存在だ。

 基幹産業は海(あ)士(ま)漁で、島の男たちが海に潜ってウニやアワビ、サザエを獲る。海を守るため、島では昔から乱獲しないと決め、海士たちが1艘の船に乗り込み協力しあう。この漁法は国土交通省の「島の宝100景」に指定されている。しかし近年、地球温暖化によって海の状況は悪化し、漁獲量や質が落ちているという。

 Uターンした若者の夢は、家族をつくって島で暮らすこと。島生まれの宗勇人さん(30)は、シェフとなって島に戻り、平成28年に「リストランテマツシマ」をオープンさせて、その先駆者となった。食材は海士である父や弟の秀明さん(26)らが獲った海の幸と、祖母が育てた島野菜。1日1組限定の島レストランとして、瞬く間に注目を集めた。

 「兄が“道”を作ってくれたから、自分も」と、秀明さんは海だけに頼らず山を開墾し、製塩や養蜂を始め、グランピング施設を立ち上げるためクラウドファンディングも率先して行った。グランピングとはグラマラス(魅惑的な)とキャンピングを掛け合わせた造語で、アウトドアの新しいスタイル。働ける場があれば、若い仲間が戻ってくると信じている。

1艘の船に乗り込む海士たち。互いの安全や暮らしを支え合う松島ならではの光景だ
1艘の船に乗り込む海士たち。互いの安全や暮らしを支え合う松島ならではの光景だ
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 原動力は故郷を愛する思い。その姿を島の年配者は口を出さずに見守り、島外の応援者も続々と増えている。

 故郷の存続をかけた取り組みは、昨今、世界が目指す持続可能な社会の構築を実現していく大きな手本となるように思う。小さな羽ばたきが熱を生み、いずれ大きな風を起こすだろう。

【アクセス】

 佐賀県唐津市の呼(よぶ)子(こ)港から定期船で約20分

【プロフィル】

 小林希(こばやし・のぞみ) 昭和57年生まれ、東京都出身。元編集者。出版社を退社し、世界放浪の旅へ。1年後に帰国して、『恋する旅女、世界をゆく-29歳、会社を辞めて旅に出た』(幻冬舎文庫)で作家に転身。主に旅、島、猫をテーマに執筆およびフォトグラファーとして活動している。これまで世界60カ国、日本の離島は100島をめぐった。令和元年、日本旅客船協会の船旅アンバサダーに就任。新著は『今こそもっと自由に、気軽に行きたい! 海外テーマ旅』(幻冬舎)。

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