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【本ナビ+1】加速する危機に最強の武器 文芸評論家・富岡幸一郎

『ヤン・フスの宗教改革』
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□『ヤン・フスの宗教改革』佐藤優著(平凡社新書・800円+税)

 著者は外務省で対ロシア外交の最前線で活躍し、その後、『国家の罠(わな)』で作家として鮮烈デビューを飾ったのは周知の通り。その旺盛な執筆・言論の根幹にあるのは、この国でもまれなキリスト教神学者としての力量である。

 プロテスタント、とりわけカルヴァン派の信仰が、その多彩な評論活動の根本にある。本書もそうであるが、宗教改革の思想のダイナミズムを、歴史と現在を精確に分析し、総合的に捉える方法の最強の武器としている。

 ヤン・フスは、ルターやカルヴァンより1世紀も早く15世紀のチェコの宗教改革を指導し、異端として火刑にされた人物である。遠い昔ヨーロッパで起きたキリスト教の改革を、21世紀の日本人がなぜ知る必要があるのか。

 それは中世と近代という時代の狭間(はざま)が生んだこの改革思想こそが、人類が危機の時代に直面したときの大きな指針となるからである。教会や社会の腐敗に対するプロテストだけでなく、危機に際して人間の内なる原罪が外在化、すなわち「悪」として現れることへの根源的な処方箋である。では、現代の危機とは何か。

文芸評論家、富岡幸一郎氏
文芸評論家、富岡幸一郎氏
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 「我々(われわれ)がいま生きる時代はポストモダン、つまり近代の終焉(しゅうえん)期であり、新しい歴史のフェイズにかかろうとしています。グローバリゼーションが進み、資本主義を含む近代的なシステムの秩序が通じなくなりつつある歴史空間に生きているのです」

 新型コロナウイルス禍により、この危機は加速し、世界は大きく変容しようとしている。監視と統制の強化、翼賛体制、優生思想、そして新たな全体主義の到来。近代の人間中心主義は、人間の原罪を忘れさせた。理性と合理が「神」となった。宗教改革の思想は人間の原点に戻り、危機の克服を示す。

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