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【話の肖像画】作家・湊かなえ(47)(8)没頭し過ぎ鼻血…新人賞受賞

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デビュー作『告白』が刊行直後から注目を集め、執筆依頼が集中した (平成20年12月撮影)
デビュー作『告白』が刊行直後から注目を集め、執筆依頼が集中した (平成20年12月撮影)

 《平成16年秋、31歳で始めた投稿生活。期限を3年と区切って自らを追い込んだ》

 期限を決めたからには、自分が子供の頃から好きだったミステリーを書こうと思いました。残り1年に迫った18年秋のことです。チラシの裏に、ミステリーから連想する言葉を書き出していきました。無理やり絞り出した中に、気づいていない何かがあるかもしれない。殺人、麻薬、誘拐、復讐(ふくしゅう)、シンジケート…。シンジケートって何だ? と思いながら、とにかく紙がいっぱいになるまで書きました。

 その中から、目に留まった言葉が「復讐」でした。誰が誰に復讐をするんだろう。理由は何だろう。方法は? 頭の中でだんだんと物語が広がっていきました。

 学校の教師が生徒に復讐する。いくら教師と生徒の関係があっても、大切な子供を殺されたら復讐するだろう。教師として、どんなシチュエーションでやるのかな。10代の子って、大勢の前でさらし者にされることを一番嫌がるから、クラスの生徒の前で、最初は関係のない話から入って、じわじわと追いつめていく。そんなふうに考えていきました。

 《中学の女性教師がクラスの生徒たちの前で、この中の生徒2人に娘を殺害されたことを告げ、復讐を仕掛ける短編のミステリー「聖職者」を書きあげる》

 鼻血がしたたり落ちるほど没頭して書き、1カ月もかからずに完成しました。読み返してみても、すごく満足のいくものが書けたと思いました。これで賞が取れるんじゃないかなという自信があったんです。

 《同作は19年春、双葉社の第29回小説推理新人賞を受賞する》

 最終選考に残っていて、受賞した場合だけ、選考会後の夕方に連絡しますと、双葉社から事前にお知らせがあったのですが、その日は朝から電話が鳴る幻聴が聞こえるんですよ。トイレにも行けなくて。いよいよ夕方、家のインターホンが鳴りました。何事かと外に出てみると、側溝に自転車が落ちて、近所の子供たちが助けを求めている。子供は無事でした。自転車を側溝から出して家に戻ったら、留守番電話が点滅している。電話に出なかったことでやる気がないと思われて受賞を取り消されたらどうしよう。心臓が止まりそうになりながら待っていたら、30分後に受賞の電話がかかってきました。

 《同時期に、脚本「答えは、昼間の月」が創作ラジオドラマ大賞に選ばれ、NHKのFMシアターでラジオドラマとして放送される》

 うれしいことが重なりました。小説推理新人賞の「聖職者」は短編だったので、双葉社から「1冊分になるように頑張って書いてください」と言われて続きを書き、念願のデビュー作『告白』(20年)を出すことができました。(聞き手 横山由紀子)

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