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【話の肖像画】作家・湊かなえ(47)(5)会社を辞め憧れのトンガへ

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 《就職氷河期をかいくぐり、平成7年にアパレルメーカーに就職した》

 ここで一生がんばろうと思って入社した会社です。1年目は、京都のデパートで服を売る仕事をしていて、ノルマもありました。そんな年の秋、通勤のバスの中で、青年海外協力隊の隊員募集のポスターが目に留まりました。それまで、職業というと学校の先生や公務員、会社員くらいしか思い浮かばなかったけれど、こういう選択肢もあったんだと思いました。説明会の日がちょうどデパートの定休日と重なっていたので、行ってみました。

 説明会で冊子を渡され、自分にできそうな家政分野のページを開いたら、トンガで中高一貫女子校の家庭科教師の募集がありました。あ、これ、自分が行くんじゃないかなと感じたのです。トンガは、子供のころから憧れていた南太平洋の島。大学の卒業旅行で行く予定でしたが、阪神・淡路大震災が起きて計画を変更して実現していませんでした。

 人生には、タイミングがあって、ここというときに、ちゃんとチャンスをつかまないといけない。きっとここで行かないと、一生トンガに住むチャンスはめぐってこないだろう。会社を辞めてトンガに行く選択をしました。震災を経験し、人生について深く考えたこともあり、やらないで後悔するより、やって後悔する方がいいと思ったのです。

 《訓練を経て、平成8年12月から2年間、トンガの中高一貫女子校で家庭科の教師を務めた》

 当時のトンガは、生活習慣病が問題となっていて、家庭科教師として学校教育の中で、太らないための栄養指導を行うことが私の役割でした。

 トンガは、常夏の島。大きなマンゴーの木が至るところにあって、暑いときは木陰に入って落ちているマンゴーを食べながらおしゃべりをする。そんな光景がよく見られました。握りこぶしくらいの大きさで甘くておいしいのです。マンゴーは買うんじゃなくて、落ちているのを拾って食べるものでした。ある日、学校の中間試験の監督をしていたら、終盤あたりにポケットの中をガサガサさせている子がいて、カンニングかと思ったら、マンゴーを取り出してかじり始めたんです。え、マンゴー? あっけに取られました。

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