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【話の肖像画】作家・湊かなえ(47)(4)自転車に魅せられた大学時代

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作家の湊かなえさん(南雲都撮影)
作家の湊かなえさん(南雲都撮影)

 《平成3年、生まれ故郷の広島県・因島を出て関西の大学に進学する》

 高校時代、数学が割と得意でしたので理系のクラスに所属していて、薬学部とか工学部の建築とかがいいなあと思っていたんですが、うちは古い考え方の家で、親から「女が理系だ、工学部だなんて。もうちょっと違うところにしなさい」といわれて。また、進学先も関西までなら、という条件がありました。そこで受験科目に数学があって、手先が器用だったので、服を縫ったりしようかなと思って、武庫川女子大学(兵庫県西宮市)の家政学部被服学科を選びました。

 大学では気の合う友達がたくさんできました。また、学生数日本一の女子大ですから卒業生も多く、作家になって各地で開いたサイン会には、卒業生の方がたくさん来てくださってうれしかったです。

 《クラブ活動にも熱中した》

 友達に誘われて、神戸大学のユースサイクリング同好会に入りました。近くの六甲山辺りを自転車で回るくらいかなと考えていたら、夏は自転車で北海道や東北を走るというではありませんか。旅行会社を通さずに自分たちで旅をすることができるんだと、森村桂さんの旅行記(『天国にいちばん近い島』)を読んだときと同じ衝撃を受けました。

 「来週、新歓合宿で香川のこんぴらさんに行くけど来る?」と言われて、フェリーで高松まで行き、自転車で走ってユースホステルに泊まる体験をしました。実家が柑橘(かんきつ)農家だったこともあり、これまで家族旅行をしたことがなかったので、自分の足で自転車をこいでいろいろなところに行けることに魅力を感じました。

 1年生の夏合宿は東北で、青森駅に集合でした。その前に北海道を回ることになり、舞鶴から小樽行きの船に乗って、札幌から支笏湖、洞爺湖、室蘭まで走り、室蘭から船に乗って青森駅で仲間と落ち合いました。楽しくて仕方ありませんでした。

 2年生の夏は北海道で、合宿前に2、3週間、一人旅をしました。ユースホステルに泊まり、全国各地からバイクや自転車で来ている人と仲良くなり、住所を交換して文通をしたり。そして、美幌のユースホステルで仲間と合流しました。

 3年生の夏には信州で合宿に参加した後、沖縄の宮古島や石垣島、西表島を自転車で巡って、スキューバダイビングのライセンスを取って海に潜り、真っ黒になって帰ってきました。

 そして、4年生。就職活動です。就職氷河期で地方出身の女子学生には不利でしたが、因島には戻らないという意地がありました。必死の思いで、7月にはアパレルメーカーから内定を頂きました。

 《大学卒業を控えた平成7年1月17日、阪神・淡路大震災が起きる》

 住んでいた阪神甲子園球場のすぐ裏のアパートはひびが入った程度で無事でしたが、生きることについて、人生について深く考える出来事でした。長い人生が約束されているわけではない。後悔のない日々を送りたいという気持ちになりました。(聞き手 横山由紀子)

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