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【話の肖像画】作家・湊かなえ(47)(2)ミカン農家、瀬戸内の島育ち

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作家の湊かなえさん(南雲都撮影)
作家の湊かなえさん(南雲都撮影)

 《出身は瀬戸内海に浮かぶ広島県の因島。祖父母と両親、妹の3世代同居の大家族の中で育った》

 幼い頃は、父の弟の叔父も同居していて7人家族でした。叔父は父とは年がすごく離れているので私の方が年齢が近くて、「サザエさん」のタラちゃんとカツオ君みたいな感じでした。

 《因島は造船と柑橘(かんきつ)類の栽培が盛んな温暖な島だ》

 実家はミカンやハッサク、ネーブルを栽培する柑橘農家です。子供の頃、秋から冬にかけての収穫期の週末はミカンを摘む手伝いをしていました。将来、農家の人とは絶対に結婚しないぞと決めていましたね。家にミカンがあるので、風邪をひいたときにしか買ってもらえないリンゴは憧れの果物でした。ミカンは子供の頃に一生分食べた感じです。だから今は、数多く食べたいとは思いません。それでも、うちのミカンは酸味と甘みがちょうどよくて最高だと思っています。

 《読書好きの母のもと、本を読むことに熱中した子供時代》

 父は会社員でしたが、母と祖父母はミカン畑に行っていました。夏は早朝から、母たちが害虫予防や草取りに畑に出かけます。小学校の夏休み、私は畑には付いていかなくて、午前中はラジオ体操に行って宿題をやった後、母が机の上に置いていく課題図書を読んでいました。読み終わったら、母に感想を言うんです。怪盗ルパンシリーズの『八つの犯罪』が面白かったですね。母が子供の頃に読んでいて、嫁いだときに持ってきたのでしょうが、全部はそろっていないので、小学校の図書室で他のルパンシリーズや、江戸川乱歩を借りて読んでいました。

 課題図書の中には、『ロビンソン漂流記』もありました。冒険物、サバイバル系が好きなんですよ。テレビアニメ「家族ロビンソン漂流記 ふしぎな島のフローネ」もよく見ていました。舟を作ったり、木の上に家を建てたりするのが面白くて。

 《人生に深い影響を与える本と出合う》

 高校を卒業するまで、修学旅行などの学校行事くらいでしか島を出たことがなかったのですが、どこか遠い見知らぬ土地に行ってみたいという思いを満たしてくれるのが、本の中の世界でした。

 森村桂さんの旅行記『天国にいちばん近い島』(昭和41年)は、原田知世さんの主演映画がきっかけで読みました。海外渡航が厳しかった時代に、船会社の社長さんに手紙を書いてニューカレドニア行きの船に乗せてもらい、現地の人と交流した森村さんのバイタリティーにものすごく憧れました。夢は自分で切り拓(ひら)いていくものだと教えられた本です。

 今は無理だけれど、大人になったら絶対に南の島へ行くぞと思いましたね。でも、人が行ったところは後追いみたいだしなと思って、わが家の土間に貼られた古い地図を眺めていたら、南洋に「フレンドリー・アイランド(トンガ王国)」と書かれた島を見つけました。いつかここに、トンガに行きたいと夢を膨らませました。(聞き手 横山由紀子)

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