PR

ライフ ライフ

大学オンライン授業では指導不十分…実技系教員の知られざる悩み

自宅で撮影した自身の映像と資料を組み合わせて学生に見せながら、映像技術に関するオンライン授業をする倉敷芸術科学大学の小出肇教授(小出教授提供)
自宅で撮影した自身の映像と資料を組み合わせて学生に見せながら、映像技術に関するオンライン授業をする倉敷芸術科学大学の小出肇教授(小出教授提供)

 新型コロナウイルスの感染拡大で、多くの大学が実施しているオンライン授業。大学の講義というと座学のイメージから「オンラインでも問題ない」と思う人は多いが、実際は実験や実習など実技を伴う科目も少なくない。実技系のオンライン授業は、対面の数倍の労力がかかる上、質の確保が難しいなど課題も多い。ただ、対面授業の再開はクラスター発生のリスクもあり、大学にとっては悩ましい問題だ。 (文化部 平沢裕子)

 準備に5倍の労力

 「対面授業に比べ、5倍ぐらい大変だった」

 倉敷芸術科学大学メディア映像学科の小出肇教授は、4~5月に実施したオンライン授業をこう振り返った。新1年生40人を対象にした授業は、主に映画やCMなど映像作りに必要なノウハウを教える。オンライン授業のために、自宅で自身の講義を録画したり、対面では必要なかった電子化された文書やオンライン用に手直ししたパワーポイントを用意したり、対面授業の数倍の時間をかけて準備した。

 実際にオンライン授業が始まると、画面に学生の顔はうつるものの、小さくて表情などは分からない。また、学生の8割はスマートフォンでの視聴のため、自身の動きがよく見えているのか心配された。結局、対面であれば複数の学生の表情や動きを見ながら行えた指導ができず、教えたいことを話すだけの一方通行になることもあった。

 同大では6月から対面授業が可能になったが、感染者が多い関東の大学では、秋からの後期の授業もオンラインで行う方針を決めた大学もある。

アイデンティティー失う学生も

 大学の実技系の授業は、小出教授が担当するような芸術系だけでなく、実験のある理科系、運動系、農作業などを体験する農業系、調理実習が必須の栄養系、病院での研修がある医療・看護系、教育系などさまざまな分野に及ぶ。

 関東地方の複数の大学で運動系科目の非常勤講師をしている女性は、オンライン授業の準備に追われる大変さ以上に、大学で学びたいという学生のモチベーションが下がっていることに危機感を抱く。

 「運動系や音楽や美術など芸術系の学生は、自身の技術を高めるために大学で学びたいと思っている。でも、オンラインでは微妙な手の動きなどが分からず、自身の技術向上になかなかつながらない。また、そもそも狭い下宿の部屋では絵を描いたり楽器を弾いたりできないが、大学の施設が使えないため練習ができず、なんのために大学に入ったのかアイデンティティーを見失っている学生もいる」

 また、教員や医師・看護師などの養成には、実技を身につけるために現場での実習が不可欠だが、オンライン授業では実習のための実技の指導ができない。結果として、教員の質や、医師・看護師では国家試験に影響を与える可能性もある。

「対面授業ならではの効果」

 ネット上には、「小中高専門は再開していてなぜ大学だけオンラインなのか」「後期オンラインに断固反対」など、対面授業を求める学生の声が多数寄せられている。一方で、「バイトや飲み会もする大学生が大学に行けばコロナの感染が拡大する」など、感染拡大への不安から大学再開に否定的な声も少なくない。

 萩生田光一文部科学相は8月4日、「対面授業ならではの効果がある」と対面授業の必要性を認め、大学側にオンラインと対面授業の併用を促した。対面授業を求める学生の声にどうこたえていくのか、大学の真価が問われている。

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ