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【Dr.國井のSDG考~置き去りにしない社会を目指して(5)】(下)ゲスト・土井香苗氏 国の経済発展と人権擁護は比例しない

医師の國井修さん(松本健吾撮影)
医師の國井修さん(松本健吾撮影)
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 「世界エイズ・結核・マラリア対策基金(通称・グローバルファンド、GF)」の戦略・投資・効果局長を務める医師の國井修氏が、誰も置き去りにしない社会について会いたいゲストと対談する企画の5回目は、HRW日本代表の土井香苗氏を招いた。(下)では法曹や医療の仕事の可能性を語り合い、若い人にエールを送った。

 國井 土井さんは以前、経済発展と人権擁護は比例しない、GDP(国内総生産)が上がったからといって人権が守られるようになるとはかぎらないという話をされていましたね。GFがサポートする国の中には、アジアや東欧、ラテンアメリカなどで経済力が上がってあと数年すれば援助から卒業できそうな国もあります。ただ、中には人権擁護が十分でない国もあります。どこを変えていけば、持続的に人権が守られるようになりますか。

 土井 ご承知の通り、世界第2位の経済大国、中国は人権的にはとても2位とはいえません。むしろ人権侵害大国です。香港版国家安全維持法、ウイグル、チベットなど、組織的かつ大規模な人権侵害が続き、市民的・政治的自由はどこにもありません。経済力と人権状況はまったく比例していません。

 世界的に比較すると、日本は人権面では比較的優等生ですが、完璧には程遠いです。人種差別や性的指向による差別を禁止する法律(平等法)がないですし、人権をつかさどる中央省庁がないなど、人権の中核的制度がありません。個別分野でも薬物対策など遅れている分野があります。ドラッグ所持を非犯罪化して保健的アプローチで行こうというのが世界の流れですが、日本は厳罰化に動いているくらいです。刑事司法も、自白しなければ身体拘束が続く「人質司法」が世界的に批判されています。

 それでも中国と日本では、内なる改革のやりやすさがまったく違います。日本ではメディアは基本的に独立しているし、社会問題や差別問題を司法に問うこともできる。報道の自由、表現の自由、集会の自由、NGOを作れる自由(結社の自由)、司法の独立があります。一方、中国では社会問題があっても司法に持ち込むことができず、メディアも書けず、NGOを作ろうとすると壊滅させられます。内なる改革が極めて難しい国です。

 國井 「日本には差別なんてない」という人がいることに驚きます。差別された人は、悩んでいることをしゃべらない、自分だけで抱えてしまう人も多い。差別や偏見によって人が傷ついていることを多くの人が分かっていない。

 僕らが今支援していることのひとつは、当事者や市民社会のためのネットワーク作りです。差別・偏見・迫害されている人たちのピアグループは多くの国にあり、GFの資金でHIVの治療・予防活動をサポートしている当事者組織も多くあります。そのグループ同士のネットワーク作りを支援することで、彼ら同士で学び合い協力し合い、力をつけていく。活動を活性化し強化していく。この国には性産業従事者が自ら創設した市民組織があって、HIV予防対策でこんなに成功している。では別の国のあの団体にそのやり方を伝授しよう。そんな学び合いや助け合いをしています。既に、ラテンアメリカや東欧・中央アジアなど世界4地域でそのようなネットワークづくりを支援して、その活動は広がっています。

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