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【正論9月号】米国で起きている潮流 トランプ再選阻止のうごめきに注意 福井県立大学教授 島田洋一

ボルトン前米大統領補佐官=2020年2月、米テネシー州(AP=共同)
ボルトン前米大統領補佐官=2020年2月、米テネシー州(AP=共同)

 ※この記事は、月刊「正論9月号」から転載しました。ご購入はこちらをクリック

 ジョン・ボルトン前米大統領安保補佐官の回顧録『The Room Where It Happened』は、大統領選が終盤戦に入る時期に元側近が「トランプを再選させてはならない」というメッセージと共に出したものだけに、出版前から政争の渦中に置かれた。それゆえ、いくつかの意味で読み方に注意を要する本である。

 世論調査で不利を伝えられる中、巻き返しに全力を挙げるトランプ陣営の人々がボルトン氏を「裏切り者」と非難するのは当然だろう。誰もがトランプ大統領の「余計な発言」には困惑しつつも、総合的に見て民主党バイデン大統領候補より遥かによい、重要課題で突破力も見せてきたとの判断のもと、支持に回っているのである。

 「トランプにもバイデンにも投票しない。誰か保守派の名前を書く。私の住むメリーランド州はバイデンの勝利が確実で、私が誰に入れるかに意味はない」といったボルトン氏の発言はやはり無責任だろう。彼の外交安保論に注目してきた人間として残念である。

 私の友人で、国務省、国家安全保障会議(NSC)でボルトン氏の首席補佐官を務めたフレッド・フライツ氏(現、安全保障政策センター所長)は、(1)ボルトン氏はせめて本の出版を選挙後まで延ばすべきだった(2)トランプ大統領がイランへの報復攻撃を土壇場で止めたのが「転換点」で、決定的に幻滅した。トランプ大統領は選挙のことしか考えていないとボルトン氏は言うが、重大事態につながりかねないイラン領内爆撃を米側被害(無人偵察機の撃墜)との比較考量で中止としたのはトランプ大統領なりの「原則に基づく決定」であって選挙は関係ない(3)大統領の内輪の発言を補佐官が公開することが許されれば、大統領は今後率直にアドバイスを求めることができなくなる(4)補佐官は大統領を支えるのが仕事で、喧嘩をしに行くのではない、ポンペオ国務長官はその点をわきまえているが、ボルトン氏は結局出処進退を誤った-など、「非常に重い気持ちで」批判的なコメントを出している。

トランプ氏の戦略的本能

 トランプ大統領の外交をボルトン氏は「本能と思い付きだけ」と評するが、回顧録を子細に読めば、随所にトランプ流の戦略が浮かび上がってくる。確かに無節操な思い付きに溢れてはいるものの、トランプ大統領の戦闘的本能には侮れないものがある。

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