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【ビブリオエッセー】大切な思いを伝えるには… 「交換ウソ日記」櫻いいよ(スターツ出版文庫)

 「交換日記」をご存じだろうか。SNSでその時その場の思いを伝え合う時代に、この小説は、手書きの交換日記を軸にして物語が進んでいく。

 主人公の高校生、黒田希美はある日、机の中に「好きだ」とだけ書かれた手紙を見つける。差出人は学校一の人気者、瀬戸山潤だった。「息が止まるかと思った」希美と瀬戸山くんの交換日記が、その日から始まる。

 実は、瀬戸山くんは希美と彼女の友人、松本江里乃の席を勘違いしていたのだ。希美は本当のことを打ち明けるべきか悩みながらも江里乃になりきって返事を書くことにする。ウソで埋まっていく日記はどうなっていくのか、ドキドキする物語の結末は…。

 ストーリーだけではない。二人のやりとりに用いられるものたちも魅力的だ。特別なものでなく、手紙や机や靴箱やルーズリーフ、そして放送室と身近なものや場所でのやりとりが物語をリアルに感じさせてくれる。そして最大の魅力は二人の性格が正反対なことだろう。

 友人のことを思うがゆえに自分の意見が言えない希美と、なんでもはっきり口にする瀬戸山くん。そんな二人がお互いを理解しようとする姿、思いやる姿には考えさせられるし、私もこんな風にしよう、とヒントをもらえる。

 お気に入りの台詞がある。好みもはっきり言えない希美に「なんでもいいんだろう?…それで、いいんじゃねえの?…自分の意見だろ、それも」と瀬戸山くんが言う場面だ。相手を否定するのではなく尊重する気持ちが胸を打つ。

 心温まるこの一冊が大好きだ。SNS全盛の今だからこそ私も思いを文字にしていきたい。大切な人と会うのが難しい時にこそ相手を大切に思うこの物語を、また読み返したい。

 大阪市東住吉区 小泉歩理(あゆり) 17

     ◇

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