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【話の肖像画】作家・阿刀田高(85)(14)今も原稿用紙に手書き

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(三尾郁恵撮影)
(三尾郁恵撮影)

 《昨年出版した新書は『老いてこそユーモア』。ユーモアこそ人生を豊かにすると訴える》

 ユーモアの尊いところは、別な角度からモノを見るということ。物事に完全に巻き込まれないで、違った視点で社会や自分を見つめることはとても大切です。ユーモアは知的な体験によって生まれるから、成熟した脳みそのほうが扱いやすい。年を経てからのほうが、親しみやすいんじゃないですか。

 私は、ユーモアのある家で育ちました。別な視点でモノを見るからこそ、肺結核のあとは「命なんてこんなもの」とある種の達観を持って生きてきました。努力もしたし、恵まれましたが、自分の心のままに好きなように生きてきました。

 このごろは新型コロナウイルスもあって、あまり外に出ることもなく、(昨年末に雑誌連載が完結した)「谷崎潤一郎を知っていますか」の単行本化に向けた作業をしています。ちょっとした細かい原稿の依頼があれば、それを書くとか割と楽な毎日です。もうぽつぽつ限界かなあ。締め切りがあって書くのはおっくうかな。でも、井原西鶴は「知っていますか」シリーズでやってみたいですけれどもね。

 《読書文化再興への思いは強い。6月に発足した、学校教育での活字文化の重要性を考える「活字の学びを考える懇談会」では、会長に就任した》

 読書の問題は「最後の仕事かな」と、少し思っています。これからますますIT機器が活発になっていきますけれど、紙に書かれた活字で、モノを考えながらゆっくりと知識を得ていくことは人間にとって大切です。辞書のようにぱっと見て、何か知識を得るということについては、機械はものすごく便利。けれども、情報には簡単に得たらいけないものがある。深い思想は理解するのに時間がかかる。じっと読んで一度、放り出して、もう1回読み返して納得がいく。そのプロセスはIT機器には向かないものです。

 私は今も原稿用紙に手書きです。パソコンなども使ったことはありましたが、結局面倒だからやめました。絶滅危惧種です。

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