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【ぐんまアート散歩】五感揺さぶる「匂いの作品化」 

「レモンプロジェクト03」=前橋市のアーツ前橋(木暮伸也撮影)
「レモンプロジェクト03」=前橋市のアーツ前橋(木暮伸也撮影)

 新型コロナウイルスへの警戒は残るものの、緊急事態宣言が解除され、各地の美術館や博物館が再開した。芸術文化の“リアルな鑑賞”から遠ざかっていた感覚をフレッシュに揺さぶる展覧会が、前橋市内で開催されている。

 ミラノを拠点に活動する廣瀬智央(ひろせ・さとし)の作品約90点を展示した「地球はレモンのように青い」(アーツ前橋=前橋市千代田町)。中でも印象的なのが、3万3千個の鮮やかなレモンで埋め尽くされた代表作の一つ「レモンプロジェクト03」で、館内に入ると、芳醇(ほうじゅん)な香りが地下ギャラリーから吹き抜けを通って漂ってくる。

 廣瀬は異なる文化圏を行き来し、現実と記憶の世界が交差する作品を創出する美術家である。大量のレモンを用いた作品は1997(平成9)年に東京・銀座で初めて展示され、23年ぶりの再制作となる今回は約3倍の規模でのインスタレーション(特定の空間にオブジェや装置を置くなどして変化・異化させ、体験させる芸術)が実現した。

 着想は30年ほど前、イタリアでの体験からだという。

 ナポリの近くのソレント半島を訪れた際、街中から何か匂っていて、その匂いをたどっていくと、レモン畑に行き着く。「その体験が非常に印象的で、匂いをアートに再現できないかという思いから実現した作品」と語っている。

 匂いや香りをアートに再現するというのは、ある意味、極めて日本的である。

 日本では移ろいゆくもの、はかなく消え入るものに対して叙情的に美しいとする文化が存在する。例えば、香道においては、香を「聞く」と表現し、鑑賞する。希少な香木を通じ大自然の恵みに畏敬の念をはらい、彼らが語りかけてくるものを聞き取らなければならないと考える。

 一方、西洋において「嗅覚」は五感の中では特に曖昧で、その感覚は個人差があるため規定しにくく、視覚や聴覚といった絵画や音楽などに表すことができる感覚に比べ低い地位に置かれてきた。

 匂いを再現するというのは廣瀬にとって「西洋の考え方には存在しない形」であり、「誰もやっていないことをアートとして表現できた」と語っている。会場に来ると分かるが、見るだけではない感覚の豊かさは、実際に匂いを嗅いで歩いてみて、すべての感覚を使って体験することで強く感じることができる。

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