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【ビブリオエッセー】戦後日本人の生き方を読む 「宗方姉妹」大佛次郎

 戦中派の私にぴったりの作家たちを思い出しました。横浜にゆかりの五人、長谷川伸、獅子文六、吉川英治、山本周五郎、そして大佛次郎です。どの作家もその作品と文章の一節が私の青春時代とその後の人生の指針となり、時には立ち止まり、瞬時の光景に貴重なヒントを与えてくれたものばかりでした。

 大佛次郎の『宗方姉妹』もそんな作品のひとつです。戦時中、満州での都市づくりに賭けた技師、亮助やその妻で大連に生まれ教育を受けた節子とその妹、満里子の姉妹、二人の父、宗方忠親らを通じて、終戦後の日本人の生きようを語らせます。

 「…日本人は外国人に比べて、いそがし過ぎるんだよ。…脇目も振らない気性があるね。戦争にも、がむしゃらに駆け込んだわけだ」

 「過去を戦争でもぎ取られて了ったのは、実に日本中の人間の全部なのでしょう。…皆、新らしく生れなおすことなんだ」

 「動かない水溜りでは毒だ。ちょろちょろでもいゝから、流れることです。動くと、勢いも、ついて来るでしょう。過去にだけ、善いものがあったのではない」

 映画でも知られる『宗方姉妹』の原作は昭和24年に新聞連載された小説で、性格の対照的な姉妹を軸に節子のかつての恋人、宏もからめ家族の戦後が語られます。当時、中学一年の私に戦争のことはわかりませんでしたが、その後、大陸の牢獄で一命を終えた人々のことや、この小説で戦争の一端を知ることができました。

 単なる抒情小説ではなく人間の生き方や立ち直り方を描いたものです。戦前、戦中を満州で過ごし、戦後は引き揚げ者となった父の長兄家族のことを思いながら再読しました。

 奈良市 元島満義 83

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