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【ビブリオエッセー】誰もがかつて子供だった 「ピノッキオの冒険」カルロ・コッローディ著 大岡玲訳(光文社古典新訳文庫)

 一本の棒っきれから生まれたあやつり人形の少年が命を吹き込まれ、人間に生まれ変わる物語。この『ピノッキオ』を知らない人はほとんどいないだろう。世界中で愛されている作品だ。しかし多くはディズニーアニメや絵本で知ったと思う。名曲「星に願いを」とともに。

 そちらも名作には違いないが、おすすめしたいのは原作である児童文学の『ピノッキオの冒険』だ。大岡さんの新訳で読んだこの物語はそれまでのピノッキオ像とはまったく異なるものだった。

 映画などではウソはつくが純真無垢な子供というイメージが強い。しかし原作のピノッキオはかなりのワルで悪戯好きでなまけ者。大人の言うことを聞かず、悪い人たちの話をすぐ信用する。失敗したらその場では改心するものの、しばらくするとまた同じような過ちを犯す。何度も繰り返すがなぜか憎めない。

 そんなピノッキオを見ていると自分の幼少期と重ね合わせてしまう。子供は何度も失敗を繰り返して成長する。大人になれば記憶は薄れるが誰もがそういう過去はあるだろう。

 実はかなり陰惨な場面も少なくない。それは19世紀当時のイタリアの社会情勢を反映しているという。訳者が指摘するように人間の「善悪や自由といった根源的問題」を扱っているシリアスな寓話なのだ。

 物語では回り道を繰り返した末、ピノッキオは真っ当になり、人間に生まれ変わることができた。しかし教訓を残して終わる。ウソをつけば鼻が伸び、仕事をなまけて遊んでばかりいるとロバになり、あやつり人形に戻ってしまうかもしれない。善悪と自由。時代を超えて、大人の私たちにとっても他人事ではない。

 札幌市南区 菅谷勇樹 31

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