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【話の肖像画】作家・阿刀田高(85)(6)筆一本、「奇妙な味」で勝負

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国立国会図書館に勤務していたころ(阿刀田さん提供)
国立国会図書館に勤務していたころ(阿刀田さん提供)

 《文章の仕事が増えてきたため、文筆家の道を模索し始めた》

 安定した職場ではあったんですが、そのころは文章で司書の給料と同じくらいは稼げるようになっていたんです。一生懸命頑張れば、苦労はするだろうけれど生活できるだろうし、そろそろ辞めようと考えたとき、3人の編集者と私より少し前にフリーの文筆家になった人、そして古くからの大変親しい友人に意見を聞きました。結果は4対1で辞めてもいいんじゃないかという意見が多かった。反対したのは出版社の人で、「ライターの仕事はリスキーなところがある。新人賞とか賞を取ってからでもいいんじゃないか」と言ってくれましたね。

 このころには結婚していました。妻は必ずしも賛成ではなかったでしょうが、「そこまで熱心にやりたがっているなら仕方ない」ということで承諾してくれました。

 《11年間勤めた国立国会図書館を退職。筆一本で生計を立てるように。そんななか、出版社の勧めで小説を書き始めた》

 翻訳や記事のアンカー、コピーライターまで、字を書いてお金がもらえる仕事は何でもやりました。そうしているうちに小さな出版社から、小説を書くように勧められました。小説はよく読んではいたけれど、書こうと思ったことは一度もありませんでした。何を書いたらいいか分からなかったのですが、推理小説ならたくさん読んでいた。殺人が起こってトリックがある、そういった話なら書けそうでした。

 生まれて初めて書いた小説が活字になり、原稿料をいただきました。あまりいい出来ではなかったんですが、その出版社にしたらまあまあだったのでしょう。その後も、もう一作、もう一作と言われて書いたのですが、どうしても自分の小説が好きになれない。何かが足りないんです。誰かの物まねみたいで。松本清張さんのような該博(がいはく)な知識もないし、森村誠一さんのような怨念もこもっていない。その作家が持っている一番の特徴がない、“だしがら”みたいなものを書いていた。

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