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【話の肖像画】作家・阿刀田高(85)(3)父の急逝、進路が迷路に

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小学校4年から中学生までの多感な時期を新潟・長岡で過ごした(阿刀田高さん提供)
小学校4年から中学生までの多感な時期を新潟・長岡で過ごした(阿刀田高さん提供)

 《阿刀田家は学者の一族だ。父の兄は西洋史学者。鋳物の技術者だった父もよく本を読み、学問への尊敬と情熱がある家庭だった》

 子供の本なんてめったにない、日本が大変貧しい時代でしたが、家には本があふれていました。父の本は、「汚すからダメ」と言われていたのでこっそり読んでいました。小学校5、6年になると、父の本棚にあった落語全集を取り出して精読していました。話のおもしろさにひかれたんです。落語はラジオでも聞いていましたし、しゃれ言葉が好きでしたね。

 父の蔵書に『世界裸体美術全集』がありました。全6巻の堂々たる全集でしたが、子供に見せるものではないと思ったのでしょう、押し入れの奥にありましたが、少年のみだらな好奇心も手伝ってよく見ていました。そのなかでもギリシャ神話の場面を描いた、アンドロメダ姫の絵は今でも忘れられません。裸体のアンドロメダ姫が鎖でつながれている近くに、英雄のペルセウスが描かれているんです。絵の隣には説明文があるから、自然とそれが目に入って覚えてしまう。後にギリシャ神話に興味を持つようになったのは、この本のおかげです。今見ると、よくこんなものでみだらな心を起こしたな、と思います。

 《新潟県長岡市の中学を卒業後、東京の高校に進学し、下宿生活を始めた。家族は後から上京するはずだった》

 父はもともと東京を拠点に生活をしようと準備をしていました。だから、試験を受けて合格したら東京の高校に進学してもいいといわれていたんです。

 子供にとって東京は憧れでした。高校に入学してからは、休みの日に映画を見に新宿に通いました。名画座で映画をみて、定食を食べて帰るのが楽しみでした。ボブ・ホープの『腰抜け二挺拳銃』、ダニエル・ダリューの『うたかたの恋』。西部劇やフランス映画をたくさん見ましたね。

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