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大地と時代の風の中で 没後50年 神田日勝展

 初期の作品群はざらついた茶褐色に包まれている。ドラム缶や履き古した靴、労働者風の男といったモチーフが、奥行きのない画面に押し込まれている。高度成長下で置き去りにされるものを見つめた社会派リアリズム、特に朝鮮半島出身の画家、●(=恵の心を日に)良奎(チョヤンギュ)の影響が指摘されるが、神田は実物の絵は見ておらず、新聞などのモノクロ画像を参考にした。今回、貴重な●(=恵の心を日に)作品も展示されている。

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 昭和40年代に入ると画風は一変。ポップアートのように鮮やかな色で、絵の具や筆、家財道具などを配した室内風景を描き始めた。

 「変わらないのは、この奇妙な空間表現」と冨田館長は指摘する。視点が複雑に入り組み、影はない。遠近感が乏しく、床か壁かも迷う。「わざと空間意識を攪乱(かくらん)しているんです」。室内画とほぼ同時期、欧州の激しい抽象絵画に触発されたのか、奔放な筆触と明るい色で人や馬を描いた作品群も残している。

 「迷っていたのでしょう。家庭もあり、農業と画業を両立させるはずが、彼の中で絵が大きくなり、ジレンマを抱えたのかも」。中央画壇から離れているから一層、その潮流に敏感になったのかもしれない。まだ若く、迷走や試行を重ねてもおかしくない。

 最後の完成作「室内風景」。真正面を凝視し座る男は画家自身か。新聞を張り巡らせた部屋に、人形や果物の皮や魚の骨が散乱する。逃げ場のない閉塞(へいそく)感と同時に、非現実感も漂う。

 彼は、室内風景の中に馬がいるというシュールなスケッチを残しており、新展開を予感させたまま逝った。「早世画家は若くして“完成されている”ことが多い。でも日勝は未完成のまま。もうちょっと先を見たかったな」と冨田館長。「馬(絶筆・未完)」の背景に、彼は何を描くつもりだったのだろう。

 28日まで、無休。観覧は日時指定の事前予約制。詳細は公式HP(www.ejrcf.or.jp/gallery/)へ。

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