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【主張】国内最高額の薬 価格には信頼が不可欠だ

 約1億7千万円という遺伝子治療薬が、公的医療保険の対象になった。過去最高額で日本で1億円を上回ったのは初めてだ。乳幼児の脊髄性筋萎縮症の治療薬「ゾルゲンスマ」で、点滴により1回投与する。

 これまでは人工呼吸器を生涯装着するか、2歳程度までしか生きられなかった幼児が、早期投与により座ったり歩いたりするようになった事例が報告されている。

 長期的効果の見極めはこれからだが、根源的治療になるかもしれない。幼児の人生を開くものとして、家族と期待を共有したい。

 1剤あたりは高額でも、患者の自己負担は低い。個人では負えない大きなリスクに直面しても、効果のある治療があるなら使えるようにすることは公的医療保険の本来の役割といえる。

 ただ、価格が決まるまでの経過には苦言を呈したい。厚生労働省の「先駆け審査指定制度」が適用された。画期的な効果があり、世界に先駆けて日本で開発・申請される薬を、スピード承認と高い薬価で報いる仕組みだ。

 だが、優れた新薬を早期承認する狙いが、今回は途中で失われた面は否めない。薬剤の開発元だったベンチャーによって品質に関する不適切なデータ操作があったことが、製薬会社から報告された。品質の再評価が行われ、有効性や安全性に影響はないとして認可された。

 製薬会社は、開発元ベンチャーへの監督が行き届かなかったことを猛省すべきだ。この不祥事で審査は少なくとも数カ月遅れた。

 こうした問題があったにもかかわらず、指定制度に伴う加算により、価格に約1千万円が上乗せされたことには疑問を感じる。公的医療保険に関わる薬価には信頼が不可欠である。厚労省は加算の見合わせも検討すべきだったのではないか。

 公的医療保険の対象となる高額薬には肺がん治療薬「オプジーボ」や血液がん治療薬「キムリア」もある。高額でも効果の高い薬を用いる必要性は、これからますます出てくるだろう。

 保険対象の高額薬が増えれば保険財政を圧迫し、ひいては保険料や税金で国民負担が膨らみかねないことも同時に認識しておかなくてはならない。その意味でも価格が効果に見合うかどうかを丁寧に精査していく必要がある。

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