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【ビブリオエッセー】たったひとつの願い 「かがみの孤城」辻村深月(ポプラ社)

 「たとえば、夢見る時がある。」

 見知らぬ転入生の存在を、その優しい微笑みを心待ちにする少女-。最初のページを読んだとき、作者はどれだけ子供の気持ちが分かる方なんだろうと思った。私もクラスに友達ができなくて独りぼっちになってしまったとき、同じように思ったのを覚えているからだ。

 この本に出合ったのは、まだ本を5冊ぐらいしか読んだことがなかったとき。私は500ページ以上もある分厚いこの小説を、夢中になって一週間で読み終わった。2018年の本屋大賞に選ばれ、他にも数々の賞を受けた名作だ。

 中学に入学したばかりの安西こころは同級生の恋愛に巻きこまれ、いじめにあう。以来、不登校になった。ある日、部屋の姿見の鏡が突然光り、こころは誘われるように鏡の中の世界へ。そこには狼のお面をつけた謎の少女「オオカミさま」がいて、城へと導かれる。

 招かれたのはこころを含め七人の少年少女だ。七人の共通点はたった一つ。みんな雪科第五中に通うはずだったのにそれぞれの事情で通えなくなったということだけだ。

 そこは一人だけ願いを叶えることができる城だった。七人への課題は「願いの部屋」の鍵を探すこと。ただし期限がある。終わればここでの記憶は消える。そうオオカミさまに告げられ、約一年にわたる鍵探しが始まった。

 誰が願いを叶えることができるのか? オオカミさまの正体は? 謎たちが一本の糸のようにつながる感覚が最後に待っている。

 たかが学校-。学校だけが居場所じゃない。他にも居場所はちゃんとある。そう思わせてくれた物語だ。大人たちも、きっと驚く。

 大阪府枚方市 C・A 14

 【ビブリオ・エッセー募集要項】本に関するエッセーを募集しています。応募作品のなかから、産経新聞スタッフが選定し、月~土曜日の夕刊1面に掲載しています。どうか「あなたの一冊」を教えてください。

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