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初クラスターの屋形船、中傷乗り越え営業再開 感染経路なお不明

営業再開した屋形船「船清」のおかみの伊東陽子さん=28日午後、東京都品川区(三尾郁恵撮影)
営業再開した屋形船「船清」のおかみの伊東陽子さん=28日午後、東京都品川区(三尾郁恵撮影)
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 新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言が解除されたことを受け、東京都内で初のクラスター(感染者集団)が確認された東京の屋形船が28日、約3カ月半ぶりに営業を再開した。発生当時、「屋形船関係者が中国人旅行客と接触があった」とされたことで批判が集中。予約キャンセルが相次ぎ脅迫状も届くなど、業界は甚大な影響を受けた。どのようにウイルスが持ち込まれたのかは今も判然とせず、風評被害の払拭も道半ばだが、関係者は「一刻でも早く日常を取り戻したい」と逆境に立ち向かう。(王美慧)

 ■次々と感染

 28日午後、品川区内にある桟橋。久しぶりの客を出迎えようと屋形船運航会社「船清」(同区)の従業員らが清掃や料理の準備に追われていた。女将(おかみ)の伊東陽子さん(67)は「やっと再開できた。心からうれしい」と、安堵(あんど)の表情を浮かべた。

 「利用客に感染者がいた」。2月13日、伊東さんの携帯電話に保健所から連絡が入った。約1カ月前に屋形船で行われた新年会に参加した70代の男性客が、新型コロナに感染していたという内容だった。

 新年会が開かれたのは1月18日夜。隅田川に浮かぶ屋形船で、団体客約70人が2時間半にわたり食事やカラオケを楽しんだ。定員約120人の船内には長机12個が2列に並び、掘りごたつの席には机ごとに6~7人が座っていた。雨が降っており窓は閉められていたが複数ある換気扇は作動していた。

 その後、団体客の感染が相次いで判明。2月14日には同社の70代の男性従業員の感染が分かり、濃厚接触者として検査を受けた40代の男性従業員の感染も確認された。感染者は約10人に上った。

 ■損失額1億円超

 感染が確認された従業員の一人は、新年会の3日前に屋形船を利用し乗船した中国人ツアー客の団体に対応していた。これを受け、都は発表の中で「感染した従業員が中国客と接触していた」などと、屋形船が感染源である可能性を示唆した。

 ただ、伊東さんは「ツアー会社に確認したが、中国人の団体客の中に感染者はいなかった」と指摘。ウイルスがどのように持ち込まれたかは、今も判明していない。

 隅田川沿いの桜が満開を迎える春先にかけて花見客で予約が埋まっていたが、10月頃までの予約はほぼキャンセルとなり、損失額は1億円を超えた。

 同社では昨年末に船を購入しており、桟橋の設備投資などで数千万円の支払いを抱えていた。約40人の従業員への人件費も重くのしかかる。「一時は廃業も脳裏をよぎった。不安しかなかった」(伊東さん)。加えて会社には脅迫状が届き、誹謗(ひぼう)中傷の電話もかかってきた。伊東さんは精神的に追い詰められた。「買い物に行くにも周囲の視線が怖かった」

 ■全国から励まし

 一方で、全国から「頑張れ」「存続してほしい」などの応援や励ましの言葉も500件以上寄せられた。

 政府の緊急事態宣言解除を受け、都の休業要請の緩和措置がとられた。屋形船は「飲食店」に分類されていたことから、営業再開を決断した。座席数を減らし、船内にはウイルス除去の空気清浄機を複数台設置するなど、できる限りの感染防止対策をとった。

 「みんなで危機を乗り越えていきたい。多くの方々が戻ってきてくれることを願っている」。伊東さんは前を見据えた。

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