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【書評】『私はC-3PO』 演じてこそ語れること

 金色のボディー、怒りぎみの肩。腕を曲げちょっとあがった手。半開きの口。もし、映画を見ていなくとも、『スター・ウォーズ』に登場するヒューマノイド型ロボットは記憶に残っているだろう。このC-3POの役を40年以上演じ続けた英国人俳優が著した本書。俳優としてのシンプルな自伝ではないし、ロボットについての架空の本でもない。ときに重なり、ときに距離をとる、そんなC-3POと「私」の本だ。

 もっともことばを費やされるのは第一作について。

 一度つけたら容易に座ることもできず、酷暑のチュニジアで撮影が続く。C-3POは能役者のつける仮面のように、視界は極端に狭い。セリフはといえば、ロボットは呼吸をしないから、息継ぎせずに一気にセリフを言う。相方のロボット、R2-D2は電子音と、音響デザイナー自身の口笛、子供のため息や喉をならす音を混ぜている。もちろん、具体的な進行をめぐる描写やエピソードも満載だ。

 映画が公開され、初めて、どういう作品だったのかがわかって呆然(ぼうぜん)とする「私」。そして、「3POはあらゆる媒体で話題の種になりつづけた。一方の私は? まったく話題にのぼらなかった」。

 著者は、役者としてのプライドから、単に文句を言っているだけではない。いや、言ってもいる(ジョン・ウィリアムズは「C-3POのテーマ」を作曲してくれなかった、とか)のだが、ロボットのカラダでちょっと現実世界や撮影現場と隔てられているがゆえに、映画の制作や作品そのものと距離をとり、そのうえでこそ語っている。ときにC-3POについても、こんなふうに分析を加えている。

 「彼のキャラクターは、実際には人間を誇張したものだと言えるだろう。どういうわけか、観客は生身の人間ではないクリーチャーが、人間的な感情を示すと喜ぶ。そして、彼らを寛容に受けとめ、彼らに感情移入してくれる」

 役者は別のキャラクターになる。ロボットにだってなる。演じてきた人だからこそ語れるC-3POへの理解と共感。本書を読めば、きっとまた『スター・ウォーズ』が見たくなる。何度でも。(アンソニー・ダニエルズ著、富永和子、富永晶子訳、高貴準三日本語版監修/世界文化社・2450円+税)

 評・小沼純一(早稲田大学文学学術院教授)

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