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【編集者のおすすめ】『鉄路の果てに』清水潔著 国家は間違いを繰り返す

『鉄路の果てに』清水潔著
『鉄路の果てに』清水潔著

 「だまされた」-実家の本棚で見つけた亡き父のメモ書き。添えられた地図には、千葉を起点に下関、釜山、京城、ハルビン、バイカル湖…と、日本から大陸に向けて赤い線が引かれていました。それは著者の父親が経験した戦争の足跡でした。

 2019年冬。著者はメモと地図を片手に日本を出発します。韓国ソウルを経由して中国ハルビンまで空路で、そこからシベリア鉄道に乗り込み、西へ西へと向かいます。父親が抑留された厳冬シベリアへ。

 「だまされた」とは何を意味するのでしょう。なぜ著者の父親は戦後3年、帰国できなかったのでしょう。

 『殺人犯はそこにいる』などの調査報道で知られる著者は、鉄道に揺られながら、次々に浮かぶ「なぜ」について考えを巡らせます。

 父親をシベリアまで運んだソ連の鉄道は、なぜ中国国内を通っていたか。線路の幅が場所ごとに変わるのはなぜか。

 「なぜ」という疑問を解きながら歴史を振り返れば、明治以降の日本と周辺諸国との関係が浮き彫りになります。日本が大陸に乗り出し、鉄道を敷き、最後に多くの日本人が犠牲になった事実も。

 国は時に驚くほど非情な判断を下す。

 本書が示す国家の危うい本質を、過去の事柄として片付けるわけにはいきません。いつの時代も国家は間違いを犯す。間違いは、いや応なしに繰り返されるものだから。

 警鐘の書としても読めるノンフィクションです。(マガジンハウス・1500円+税)

 マガジンハウス書籍編集部・大島加奈子

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