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コロナ禍なんの…わさび漬け名店「野桜」6代目、1人で再出発 静岡

のれんを架け替えた野櫻山葵漬店=静岡葵区宮ケ崎町(田中万紀撮影)
のれんを架け替えた野櫻山葵漬店=静岡葵区宮ケ崎町(田中万紀撮影)

 わさび漬け発祥の地である静岡市に、江戸末期から160年続く老舗「野桜」のわさび漬けが24日から復活する。原材料高騰と消費増税のあおりを受けて昨年8月にのれんを下ろした同店を、6代目の野桜喜裕(ゆきひろ)さん(47)が1人で再興した。新型コロナウイルスの災禍が収まらない中での再出発に、野桜さんは「皆さんが野桜のわさび漬けを大切に思ってくださっていたと分かった。期待に応えなければというプレッシャーでいっぱいです」と気を引き締めていた。(田中万紀)

昨年閉店も…惜しむ声続々

 新しい「野櫻山葵(のざくらわさび)漬」店は、旧「野櫻本店」から数百メートル離れた静岡浅間通り商店街にオープン。長年親しまれてきた「野桜」をブランド名として残しつつ、のれんを一新した。

 安政5(1858)年から続く同店は、小規模ながら根強い固定客をつかんでいたが、近年は原材料の高騰と売り上げの低迷にあえいでいた。そこに昨年の消費増税が追い打ちをかけ、野桜さん自身が「潮時かもしれない」と昨年8月いっぱいで店を閉じた。もう商売はやめるつもりだった。

 ところが閉店が決まると、惜しむ常連客から「他店のものとは味が違う。何とかこれからも手に入らないか」といった電話やメールが大量に届いた。買収や事業承継の申し出が数多く舞い込み「誰もが知っているような大手企業の引き合いもあったし、資金援助や用地提供の話もたくさんあった」と野桜さん。

 ただ、当然ながら再興にはさまざまな条件が付けられた。数カ月間悩み抜き、最終的に「自分が思うような商品をつくり、経営理念を持った店にしたい」と、たった一人での再出発を決めた。これからも仕入れ、製造、販売、営業とすべての業務を野桜さんが一手に引き受ける。

伝統守りつつ試行錯誤

 工場生産から手作業での製造になったため、生産量は旧店の4分の1ほどの1日15キロ(約300個)が限度。保存料や香料を一切使わず酒かすと塩、砂糖、辛子粉だけで漬け込む伝統的な製法を守っている。野桜の特徴である辛みと香りを引き出すため、茎より辛い根の部分を多く使うこだわりはこれまでと変わらない。

 製造技術を継ぐただ一人の職人である野桜さんは「製法は野桜の伝統を守るが、味付けのレシピは顧客の意見を取り入れて時代に合ったものに変えていきたい」と試行錯誤を重ねている。

 新店のコンセプトは「ワサビをこよなく楽しむ」。まずわさび漬けのみの店頭販売から始め、6月以降少しずつ商品を充実させ、通信販売にも取り組む。将来的には工場見学も受け入れる。

 野桜さんは「わさび漬けは日本の宝。正しい製法を守りたい」と意気込んでおり、事業が軌道に乗れば農家に製法を伝授する全国行脚に出かける考えだ。

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