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【ビブリオエッセー】二つの国へ、愛を感じる 「フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか」 堀内都喜子(ポプラ新書)

 休日出勤、サービス残業などは当たり前で、労働組合も黙認していたような団塊の世代のわれわれも、社会人になって50年が経った。もう多くがリタイアしているので、今さら読んでもしようがないようなタイトルの本ではあるが、われわれの時代を振り返る意味もあると思って読んでみた。

 著者はフィンランドの大学に留学し、現地で様々なアルバイトを経験、帰国後もフィンランド系企業に勤めた後、在日フィンランド大使館に勤務していて、双方の国を愛し、両国の違いを冷静に分析できている。フィンランドでは勤務時間が短いだけでなく、在宅勤務もうまく使い、有給休暇は100%取得して夏休みも交代で1カ月とっている。

 日本との違いは、やはり保育制度の充実や男性の理解で女性が働きやすい風土が作られていることだろう。歓送迎会など会社で行う行事も簡素で時間が短く、各々の負担を少なくしている。また、早く仕事を終えるのが有能な人間の証拠だという意識を皆が持っていることが、残業するほど良くがんばっていると評価される日本との大きな違いだ。

 意外だったのは、そのフィンランドも「ゆとり」より「シス」、この忍耐や頑張りを意味する言葉の方が多く聞かれるということだ。厳しい冬の寒さに耐え、ロシアの脅威におびえながらも懸命に生きてきて鍛えられた精神があってこその今の「幸福度」世界一。そう考えると、少しは日本に近いところもあると思う。

 何十年か経てば日本もそうなるのではないかという希望を持たせるとともに、行間からは両国に対する深い愛情が感じられた。

滋賀県東近江市 太田吉光 73

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