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【ザ・インタビュー】日常にアンテナを張って 「人生を変えるオズの魔法」翻訳のハリー杉山さん

「オズの魔法使いは、誰もが共感できる成長物語」と話すハリー杉山さん(松井英幸撮影)
「オズの魔法使いは、誰もが共感できる成長物語」と話すハリー杉山さん(松井英幸撮影)

 テレビやラジオ、舞台と幅広く活躍しているタレントのハリー杉山さん。英国の名門パブリックスクールを卒業した秀才で、語学に堪能なことでも知られている。新たな挑戦として選んだのが翻訳だった。

 本書は、女優、ジュディ・ガーランド主演で1939年に公開された映画「オズの魔法使」を、名編集者として知られるピーター・ガッツァーディ氏が分析したもの。物語にちりばめられた人生のヒントを「知恵のエメラルド」として紹介している。

 米児童文学の名作で、カンザスの少女ドロシーが、竜巻に家ごと巻きあげられオズの国にたどり着き、旅をするというストーリーは、日本でもよく知られている。ハリーさんが初めて映画版を見たのは英国にいた15歳のころ。「おもしろかったけれど、(敵である)西の魔女がドロシーに水をかけられただけで消えてしまうのが不思議でしたし、モヤモヤもありました。ガッツァーディさんの分析を通して物語に込められた意味がよく分かった。人生の歩み方を考えたとき、相棒になってくれる本です」

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 英語番組への出演などはあったが、書籍の翻訳は初めて。「最初は数カ月あればできるだろうと考えていましたが1年近くかかった。英語には自信があったけれど、日本語の語彙を網羅できていないと気づきました」と打ち明ける。

 翻訳は試行錯誤の連続だった。本文では、欧米文学の作者名からダライ・ラマの言葉まで話題に上る。日本人になじみのない分野も、分かりやすく伝えるために辞書を引き、映画も何回も見直した。多忙な中、ロケバスの中で作業したことも。

 語学と文化の関係も考えさせられた。「英語は相手との距離が近い。筆者が『こうですよ』って言い切るのを、そのまま日本語に訳すときつく聞こえてしまうものもあるのです」

 新型コロナウイルスの感染拡大で社会に不安が広がるなか、名作から学べることは少なくない。最近では、映画監督のスティーブン・スピルバーグ氏が、自宅隔離中の人々に向けて映画版の視聴を勧めた。

 旅の終わりにドロシーは「自分の家ほどいい場所はない」と気づく。「ネガティブなものでもポジティブな側面はある。家にいることで普段は話すことができない家族と、ゆっくり話す時間になるかもしれない」

 本書では、さまざまな生きるヒントが提示されるがハリーさんが特に気に入っているのが、「世の中を初めて見るかのように見てみよう」だ。常に純粋で素直な意識でオズの国を旅したドロシーから得た教訓だ。

 「ビギナーズマインド(初心者の心)は何に対しても必要。いつものサンドイッチ屋さんだって、初めて食べたときは感動していたはず。日常の中にそういうアンテナを張っておくと人生がもっと楽しくなる」

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 元米ニューヨーク・タイムズ紙東京支局長のヘンリー・スコット・ストークスさんと日本人の母親の間に生まれたハリーさん。幼い頃は父に連れられ、日本外国特派員協会の記者会見に出席し、質問に立ったこともあったという。

 父は、1964年の東京五輪を世界に伝えたジャーナリスト。「父の歩む道をフォローしたい。来年の東京五輪で日本の魅力を発信するのが使命です」

 今後の執筆活動の可能性を尋ねると、「自分で書くというよりはまた翻訳にチャレンジしたい。難しかっただけに人としての成長がありました。フィクションを訳すならどんな感じになるだろうって考えることもありますね」

 才気煥発な35歳。新しい顔を見せてくれる日も遠くなさそうだ。

3つのQ

Q好きな文学作品は?

ジョージ・オーウェルの『動物農場』。動物を通して社会の矛盾や許されないことを伝えるセンスがいい

Q好きな場所は?

皇居。ランニングでよく行きます。都心とは思えない開放感がある

Q尊敬する人は?

父です。父親であり、人生において一番の親友

(文化部 油原聡子)

     

 はりー・すぎやま 1985年生まれ。11歳のときにイギリスに移住。99年にウィンチェスター・カレッジ入学。卒業後は企業に勤めながらモデルとしてファッションショーに出演。その後、ロンドン大学東洋アフリカ研究学院で中国語を専攻する。現在はテレビやラジオ、舞台など幅広く活躍している。

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