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群馬・上州この人 多面的な役割・歴史を発信 長野堰を語りつぐ会会長 中嶋宏さん(78)

長野堰を語りつぐ会会長の中嶋宏さん(椎名高志撮影)
長野堰を語りつぐ会会長の中嶋宏さん(椎名高志撮影)

 農業用水や生活用水、環境用水など多面的な役割を果たしてきた群馬県高崎市の長野堰(せき)。その価値を広く伝える活動を続けている「長野堰を語りつぐ会」会長の中嶋宏さん(78)が長野堰への思いや今後の取り組みなどを語った。

 長野堰は旧市中心部を西から東へ流れる全長約16キロの用水路で、烏川から取水され再び烏川へ流される。1千年余り前に上野国主の長野康業(やすなり)によって開削され、室町時代に長野業政(なりまさ)が原型を整備したとされている。

 幼いころから水遊びをしたり魚釣りをしたりと親しんでいた。「生活では『大堰』とか『大川』とか呼んでいた」

 「長野堰」として意識したのは高崎市農協理事を務めていた平成18年夏。水田農業について調査する際、初めて歴史と役割を知った。

 「すごいと感じると同時にまとまった解説本がないことを知り、だったら自分で何とかまとめたいと決意した」

 さまざまな資料をあたり、写真も添えて19年9月、「長野堰の水と光」の自費出版に漕ぎ着けた。「本を出すだけでなく、日常的に価値を伝えていきたい」と、26年4月には中学の同級生10人に呼び掛けて「語りつぐ会」を立ち上げた。

 雄川堰(甘楽町)に次いで県内2例目となった28年の国際かんがい排水委員会(ICID)の世界かんがい施設遺産登録では、申請のための文書作成など裏方として尽力した。

 「語りつぐ会」としては、江戸、明治、令和の各時代を背景に作製したジオラマなどを展示する企画展や、市内の全小中学校に配布したDVD「長野堰なくして高崎なし」の制作、小学生社会科副読本「わたしたちの長野堰」の編集協力、公民館や小学校などでの講演など多岐にわたる活動を繰り広げている。現在も、地形的に落差をつけ洪水エリアが実感できる防災機能付きジオラマを製作中だ。

 「子供たちからは『長野堰を知ることができてうれしかった。水を大切にしたい』、大人からは『活動をよくやってくれた』などの反響がある。長野堰はライフワークそのものだが、本当に幸せな十数年だった」

 ジオラマや地図、文書などの資料は会の事務所で保管。最近は「メンバーの年齢を考えれば数年で自然消滅してもおかしくない。だが、それで何も残らないのでは寂しい」との思いが強くなっている。

 会の財産の市への寄贈も視野に、「長野堰を含めた高崎の歴史を伝える常設施設を造ってもらえればありがたい」と声を大きくした。(椎名高志)

なかじま・ひろし 昭和17年、群馬県高崎市出身。高崎工業高校を卒業後、大手電機メーカーや家具製造メーカーなどに勤務し、企画関係の会社を設立。平成14年からは高崎市農協で理事や副組合長を務める。26年から長野堰を語りつぐ会会長。同会は「ぐんま街・人・建築顕彰会」の大賞などを受賞している。

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