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楽しいカリフォルニアワイン ~未来につなぐワイン造り~

 カリフォルニアワインが多彩な楽しみを生み出している。さわやかなソーヴィニヨン・ブランや食事に合うピノ・ノワール、軽やかなロゼなど、味わいは個性豊か。ブドウ畑が連なる景観美をはじめ、マイクロ・クライメート(微小気象)と呼ばれる変化に富んだ気候や多国籍な料理とのペアリング…と、発見や驚き、楽しみの世界が広がっていく。そして、ワインを1杯から注文できるスタイル“バイザグラス”が定着し、お気に入りの味わいを探す冒険の旅が待っている。「風土」「食」「環境保全」「流行」をテーマに、カリフォルニアワインの魅力を4回にわたって紹介する。

 ※お知らせ:カリフォルニアワイン協会(本部・米サンフランシスコ)は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、4月1日から日本全国のレストランなどで開催していた『カリフォルニア・バイザグラス・プロモーション 2020』を中止しました。同協会は、カリフォルニアワインが買えるオンラインショップリストを開設すると同時に、バイザグラス・プロモーション特設サイトでもデリバリー、テイクアウト、ワイン販売を行っている参加店を紹介していますので、是非ご覧ください。

『おうちで楽しむカリフォルニアワイン オンラインワインショップリスト』は、こちら

『カリフォルニアワイン・バイザグラス・プロモーション 2020』(中止)の詳細は、こちら

【第3回】楽しむ×環境保全:サステイナブルという価値

■人を大切にし、恵みを共有する

美しい夢の野球場。バレット・ヴィンヤーズのホームグラウンドだ(同社提供)
美しい夢の野球場。バレット・ヴィンヤーズのホームグラウンドだ(同社提供)
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 1989年に公開された米国映画『フィールド・オブ・ドリームス』。ケビン・コスナーが演じる主人公はある日、「それを作れば彼が来る」という声を聞く。不思議な体験に誘われるまま、トウモロコシ畑を潰して野球場を造る。そのフィールドを舞台に、過去と未来、家族、人がつながっていく…。

 この名作を体現したかのような野球場が、サンフランシスコの北部、ソノマ郡サンタ・ローザにある。周囲に広がるのはトウモロコシではなく、ブドウの木々。ホームランは白ブドウ種ピノ・グリの畑へ、ファウルボールはシャルドネの畑に吸い込まれていく。

 従業員は作業の合間にキャッチボールを。休日には、ほかのワイナリーが集まって、白熱した交流試合が繰り広げられる。ワイナリーのバレット・ヴィンヤーズが、人の大切さに向き合ってきた象徴ともいえる場所だ。

 バレット・ヴィンヤーズの原点は1977年にさかのぼる。創業者のジョン・バレットさんが高校を卒業した直後、父が亡くなった。ジョンさんはアメフト選手への道をあきらめ、野菜作りを始めた。事業は順調に拡大し、約70種類の野菜を手がける大規模農場に成長した。しかし、1995年以降は困難に直面した。干魃に苦しみ、エルニーニョ現象の影響で洪水被害に見舞われることも。野菜作りは多くの水資源を使い、異常気象の影響を受ける。ジョンさんと妻のテッリさんは、水への依存度が低いワイン用ブドウ栽培へと業態転換を図った。

 畑が広がるのはロシアン・リヴァー・ヴァレー地域。太平洋からの霧や起伏に富んだ土地、午後の日差し、夜の涼しさ…。ピノ・ノワールやシャルドネといったブルゴーニュ品種の栽培に適していた。すべての畑をブドウ園に変え、初のワインを販売したのが2001年。その翌年、大リーグ、サンフランシスコ・ジャイアンツのファンを誇るジョンさんに従業員が、「野球チームのスポンサーになっては?」と冗談めいた。

 「その一言から、従業員のために野球場をつくろうと決心した。約4エーカー(1万6000平方メートル)を整地し、1年をかけて大リーグの試合も開催できる規格の野球場を完成させた。もしも、ブドウの木を植えれば、12~15トン分の収穫が見込める広さ。だが、それ以上の価値がある」

 そう話すのはワイナリーの醸造家、アンソニー・ベックマンさん。自身もワイン造りの合間を縫って、息子との野球を楽しむ日々を送っている。

テッリ・バレットさん(左)と販売を担当する娘のジャクリーンさん(中央)。醸造家のアンソニー・ベックマンさんは、「サステイナブルは社会全体で取り組んでいく必要がある」と力を込める
テッリ・バレットさん(左)と販売を担当する娘のジャクリーンさん(中央)。醸造家のアンソニー・ベックマンさんは、「サステイナブルは社会全体で取り組んでいく必要がある」と力を込める
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 テッリさんは、「従業員の家族が集う行事も開催できる。より良い労働環境を提供して、10年、20年と長く働いてもらうこともサステイナブル」と話す。

 収穫したブドウは10%を選別して、自社ワインを醸造する。果実の酸味をいかした『バレット・ピノ・ノワール』や流行に左右されない『バレット・ゲヴュルツトラミネール』など多彩なワインで評価を得ている。そして、残り90%のブドウは20以上のワイナリーに卸すスタイルを守り続けている。

 バレット・ヴィンヤーズは農業を継続していくことの難しさを経験してきた。だからこそ、人のつながりを大切にし、自然の恵みは広く共有する。これもまた、長期的に持続可能な開発を目指す考え方、サステイナブルの試みなのだという。

■自然農法と科学技術を融合

 ワイン銘醸地として知られるナパ・ヴァレーのオークノール地区で、環境に配慮した農園運営を行うのはトレフェッセン・ヴィンヤーズ。ワイナリー最高経営責任者(CEO)のジョン・ルエルさんは醸造学や環境学を学び、古代農法と先端技術を融合させたワイン造りを追求している。

人の手を必要としない畑を目指すルエルさん(左)。ワイナリーの建物は、2014年8月のサンフランシスコ湾北部地震で壊滅的な被害を受けた。復旧・耐震工事を経て、今も多くのワイン愛好家を迎えている
人の手を必要としない畑を目指すルエルさん(左)。ワイナリーの建物は、2014年8月のサンフランシスコ湾北部地震で壊滅的な被害を受けた。復旧・耐震工事を経て、今も多くのワイン愛好家を迎えている
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 古代農法で取り入れているのは、自然本来の力で作物を育てることを提唱した自然農法実践家・福岡正信の哲学だ。ルエルさんは、「オークノールは土壌が複雑。区画や樹齢に合わせて、畑が自らバランスをとることができるように改善している」と指摘する。

 木の間にカバー・クロップ(間作物)を植えることで、土壌を肥沃(ひよく)にして、浸食を防ぎ、樹勢を調整する。剪定(せんてい)した枝や果実の搾りかすは堆肥にし、畑に還元されていく。自然の降水だけで水供給する乾地農法を取り入れ、水の総使用量を削減。メンフクロウやコウモリの巣箱を設置して、樹の根を食い荒らすホリネズミや害虫を駆除する。自然の力を最大限に活用する工夫が施されている。

 一方、畑を取り巻く環境の整備には科学技術を積極的に導入している。エネルギーは太陽光発電によってまかなう。ワイナリーを走るのは電気自動車で、温室効果ガスの排出を抑制する。トラクターの燃料は大豆由来のバイオディーゼル。タンク洗浄などに使われた水は適切に処理し、再利用する。

ワイナリーの一角では野菜や果物を育て、従業員は自由に持ち帰ってもいい(左)。水の処理施設では使用した水を濾過(ろか)して、灌漑(かんがい)などに再利用する
ワイナリーの一角では野菜や果物を育て、従業員は自由に持ち帰ってもいい(左)。水の処理施設では使用した水を濾過(ろか)して、灌漑(かんがい)などに再利用する
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 ルエルさんは、「ナパのサステイナブルは進んでいて、消費者も『どのように造られているか』に反応する。ナパのワインは値段が高いといわれるが、理由がある。ワインは畑から食卓に届く農産物だからこそ、安全安心を重視する。同時に、ワインはコミュニケーションを生み出す文化でもあり、新しいスタイルを提示していくことも大切。ユニークで、品質にも妥協しない-。これが、ナパが世界に発信できるメッセージ」という。

 ワインのラインアップにはドライ・リースリングも並ぶ。欧州原産のリースリングは冷涼な場所を好み、カリフォルニアでは珍しいワインの一つだ。ルエルさんは、「ナパといえば、思い浮かべるのはカベルネ・ソーヴィニヨン。そういう固定されたイメージも覆していきたい。フレッシュでエレガントなワインも知ってほしい」と笑う。

ナパの中でも南に位置し、良いブドウが育つことで知られるオークノール地区。『トレフェッセン エステート ナパ・ヴァレー ドライ・リースリング』(左)は、軽さと甘美な風味を持ち合わせる
ナパの中でも南に位置し、良いブドウが育つことで知られるオークノール地区。『トレフェッセン エステート ナパ・ヴァレー ドライ・リースリング』(左)は、軽さと甘美な風味を持ち合わせる
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■地域性をこえてサステイナブル連携

 カリフォルニアワインの生産者団体、カリフォルニアワイン協会(本部・サンフランシスコ)は、非営利団体『カリフォルニア・サステイナブル・ワイングローイング・アライアンス(CSWA)』を2003年に設立した。環境・コミュニティー・ビジネスと3つの視点から、環境と地域社会を考慮したワイン生産を目指した認証制度を運用している。

 認証制度では、コードと呼ばれる農法実践規約を定め、最適な水やエネルギー利用やビジネスとしての実現性、従業員の労働環境といった項目について継続的な見直しと向上を支援している。

 CSWAのアリソン・ジョーダンさんは、「オーガニックへの関心の高まりなどを経て、サステイナブルもワインの価値-という考え方が生産者にも消費者にも定着してきた」と振り返る。2019年6月には、ワシントン州やオレゴン州のワイン生産関係者が集まり、地球規模への気候変動なども含め、より広い視野でサステイナブルを考えるサミットが行われた。ニューヨーク州なども巻き込み、連携を広げていく動きもある。

 アリソンさんは、「さまざまな国や地域で独自のサステイナブルへの取り組みが実施されているが、水や農薬の利用など、それぞれの法律や慣習があり地域性がある。一方、地球温暖化による生産地や生産品種への影響などについては、包括的に考えていかなければいけない課題もある。どのようにして質の高いワインの生産を継続していくのか。より多様な視点で、カリフォルニアワインの可能性を考えていきたい」としている。

「ミレニアル世代を中心にサステイナブルへの関心は高い」と分析するアリソンさん。次の時代のカリフォルニアワインを見据える
「ミレニアル世代を中心にサステイナブルへの関心は高い」と分析するアリソンさん。次の時代のカリフォルニアワインを見据える
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※取材は今年1、2月時点のものです。

★簡単メモ★

 カリフォルニア州には、大きく6つの生産地域がある。海岸線は1300キロメートルにもなり、海からの冷風や霧が海沿いの畑を冷やすため、沿岸部ではシャルドネやピノ・ノワールといった品種が栽培されている。内陸の畑では、カベルネ・ソーヴィニョンやメルローが完熟する。

 米国政府承認ブドウ栽培地(AVA)のうち、半数以上が州内に集中している。カリフォルニアワイン協会が公表している2018年統計によると、米国内市場で販売されたカリフォルニアワインの数量は、2.48億ケース。米国からのワインの輸出のうち、95%がカリフォルニア産。輸出数量は4170万ケースで、140カ国以上に出荷されている。

【おうちで楽しむカリフォルニアワイン オンラインワインショップリスト】

 世界的に高い評価を得ているカリフォルニアワイン。米国はイタリアやフランス、スペインに続いて世界第4位のワイン生産量を誇り、国内の約8割がカリフォルニア州から産出されている。バイザグラスはワインを1杯から注文でき、米国では気軽にワインを楽しめるスタイルとして定着している。

 今年元日に発効された日米貿易協定によって、米国産ワインの関税は段階的に引き下げられ、2025年には完全撤廃が予定されている。米国から日本に輸入されるワインの95%以上がカリフォルニア産。関税撤廃による小売価格の値下げなども見込まれている。消費者にとっては、多様で高品質なカリフォルニアワインを楽しむ機会が広がるとして注目されている。

 リッチな味わいからエレガントなワインまで、スタイルは実に多彩。自宅で過ごす時間が増える今、ゆっくりとお気に入りの1本を見つけてみませんか。

 カリフォルニアワインを選ぶなら、オンラインワインショップリストへ。

提供:カリフォルニアワイン協会

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