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女流第一人者を超えた 囲碁最年少棋士・仲邑初段の初年度「通信簿」

 囲碁の最年少棋士・仲邑菫(なかむら・すみれ)初段(11)が4月、プロ2年目を迎えた。初年度は22勝15敗で対局数、勝利数とも同期13人のなかでトップの成績。初年度に限れば、藤沢里菜女流立葵杯(21)らトップ女流棋士の成績も上回った。

攻めて攻めて…

 勝率・596で終えた1年目の戦いに「打ち分け(五分の成績)になれば…と思っていたので、よくやったでしょう」と合格点をつけるのは、仲邑初段の兄弟子、大橋成哉七段(29)だ。菫初段の父、仲邑信也九段(46)が師匠の大橋七段は、彼女の対局を注意深く観察してきた。

 「当初は攻めるところと、守るところで迷っているような面があった。もともと攻めるのが好きなタイプだが、その良さが出ていなかった」とデビュー直後は苦戦気味だったと指摘する大橋七段。プロの対局に慣れてきたか、昨年9月から11月にかけ男性相手に7連勝を記録。大橋七段は「勝つことで自信がつき、積極的に攻めるようになった。攻めることが勝ちに結びつく、よい循環になった」と分析した上で、「攻守バランスよく打つことは、経験を積んでからできる。いまのうちはどんどん攻めていけばいいのではないか」と話す。

「先を読む力」

 現在の囲碁界を牽引(けんいん)する先輩たちの初年度はどうだったか。七大タイトルを2度も独占した井山裕太三冠(30)は1年目から実力を発揮、勝率は8割を超えていた。27年に歴代最年少で十段に就く伊田篤史八段(26)は、デビュー戦から11連勝を記録した。男女共通の採用試験でプロ入りした謝依旻(しぇい・いみん)六段(30)も6割を大きく超える勝率で囲碁界に衝撃を与えた。

 一方、数々の年少記録を更新してきた藤沢里菜女流立葵杯(21)は1年目、負け越しでスタートしている。仲邑初段の成績について、藤沢女流立葵杯は「落ち着きよう、先を読む力は私が10歳の頃と比べて、格段にすごい」と絶賛する。

 もっとも「まだ強い相手と戦っていないから」と評価を避ける声もある。1年目で仲邑初段が登場したのは予選の下位のほうで、相手は実績が少ない若手や、近年勝ち越していない棋士が大半だった。予選を突破し唯一、本戦に進んだ女流棋聖戦では、30年のタイトル(女流扇興杯)保持者である万波奈穂四段(34)の前に力負けし、七大タイトル獲得経験(王座)がある羽根泰正九段(75)にも敗れている。

序列は最下位のまま

 実力主義の囲碁界で、序列は段位のほか入段年も加味されて決まる。同じ段位なら(1)タイトル獲得の有無(2)入段の順番-が基準になり、たとえば対局時には序列上位者が上座に着席することになる。

 4月には張栩(ちょう・う)九段(40)の長女で日本棋院初の4世代棋士である張心澄新初段(14)や、初のインドネシア出身棋士、フィトラ・ラフィフ・シドキ新初段(17)ら12人がプロ入りした。後輩が入段したにもかかわらず、仲邑初段は序列で最下位(354番目)のままだ。昨年、厳しいプロ試験を経ていない「英才特別採用枠」で入段したため、“格下”扱いなのだ。男性棋士が出場しない女流棋戦での勝利はカウントされないため、七大タイトル戦や新人王戦などで30勝(あと14勝)をあげて昇段するか、後輩が「英才特別採用枠」でプロ入りするまで、「最下位の状態は変わらない」(日本棋院)。

 「世界で戦える棋士になりたい」と話す仲邑初段は「3年以内の女流タイトル獲得」を目標に掲げる。10歳棋士として期待以上の成績と強さを印象づけた。2年目の課題は格上棋士たちをどう攻略するかだ。 (文化部 伊藤洋一)

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