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【ビブリオエッセー】「朝読」変えたぶっ飛び爺さん 「窓から逃げた100歳老人」ヨナス・ヨナソン著 柳瀬尚紀訳(西村書店)

 「はぁ…」。ためいきが出た。本を置き、静まり返った教室で今日も時計とにらめっこ。文字嫌い、国語嫌い、本嫌いの三拍子そろった中学生の私は、毎日のようにある、朝の読書の時間が退屈で退屈で仕方なかった。お隣をまねて初めの3行を読んでみるが…面白くない。そんなとき出会ったのがこの本だ。

 退屈な「朝読」と授業に部活に生徒会…、一通り終えて帰ると母も買い物から帰ったところで、玄関に荷物をぶちまけ秋刀魚を冷蔵庫に入れていた。ふと足元に目をやると袋から数冊の本が顔を出し、中に分厚いのが一冊。

 普段なら私が本を手に取るなんて異常なことだが表紙を見て心が動いた。『窓から逃げた100歳老人』? その題名と禿げたおじぃがスリッパを履いてキャリーバッグを引くイラスト。衝撃だ。

 初めの3行を読んでみる。笑えるまではいかないが放せなくなり、学ランのまま、おじぃの本を抱えて自分の部屋で晩ご飯に呼ばれるまでかじりついて読んでいた。

 主人公のおじぃ、アラン・カールソンは100歳の誕生パーティーの直前に老人ホームを抜け出す。ハチャメチャな物語の始まりだ。

 ところがただのおじぃではなかった。現役時代、爆発物の専門家としてスターリンや毛沢東ら歴史上の超大物と会い、数々の修羅場をくぐっていたのだ。いまもなりゆきで大金入りのスーツケースを手にして、なんとギャングに追われている。抱腹絶倒、衝撃は笑撃に変わった-。

 次の朝から退屈な朝読は終わりを告げた。私の中でこの本は、革命そのものだった。

 奈良市 乾井琢人 20

     ◇

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