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【ビブリオエッセー】明日も頑張るバイブルとして 「海とジイ」藤岡陽子(小学館)

 人間にはバイブルが必要だ。若い頃は小池真理子さんの『知的悪女のすすめ』をバイブルに、悪女になろうと努力した。中学校の教師だった当時、斉藤洋さんの『ルドルフとイッパイアッテナ』を読み、のら猫の人生、いや、猫生(?!)哲学に魅せられた。今はこの藤岡陽子さんの『海とジイ』だ。読み終わったあと、なんだか心が温かくなって、「よし、明日も頑張ろう」と思えてくる小説なのである。

 この本は連作短編で、どれも「海」と「ジイ」が出てくる。海は瀬戸内の穏やかな海だ。人を包み込む大きさと温かさのある海だ。ジイだって負けてはいない。ジイのことばや行動で、不登校の小学生は登校する決意をし、リストラが決まった四十八歳の独身看護師は未来を信じ、高校最後の試合も大学のスポーツ推薦もだめになった青年は友人のメールに返事を送る。

 最後まで読むと、それぞれの短編に出てくる三人のジイたちが微妙に絡んでいるという設定も分かって、奥深さも感じる。ここに出てくるジイたちはみんな、どこにでもいるようなジイだ。そのジイが朴訥に、正直に自分の昔話を語る。

 これがいい。淡々と語る中に人の心を動かす何かが入っている。それは、ジイたちが一日一日を大切にしっかりと生きてきたからなのだろう。最後のジイが言う。

 「人生は短い。今日一日を限界まで生きろ」

 私もこれからの人生を日々大切に、限界まで生きて、自分の経験談で人の心を癒やせる、そんな「バア」になりたいと思う。

 神戸市東灘区 前川珠紀57

 【ビブリオ・エッセー募集要項】本に関するエッセーを募集しています。応募作品のなかから、産経新聞スタッフが選定し、月~土曜日の夕刊1面に掲載しています。どうか「あなたの一冊」を教えてください。

 投稿はペンネーム可。600字程度で住所、氏名、年齢と電話番号を明記し、〒556-8661産経新聞「ビブリオエッセー」事務局まで。メールはbiblio@sankei.co.jp。題材となる本は流通している書籍に限り、絵本、漫画も含みます。採用の方のみ連絡、原稿は返却しません。二重投稿はお断りします。

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