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楽しいカリフォルニアワイン ~未来につなぐワイン造り~

 カリフォルニアワインが多彩な楽しみを生み出している。さわやかなソーヴィニヨン・ブランや食事に合うピノ・ノワール、軽やかなロゼなど、味わいは個性豊か。ブドウ畑が連なる景観美をはじめ、マイクロ・クライメート(微小気象)と呼ばれる変化に富んだ気候や多国籍な料理とのペアリング…と、発見や驚き、楽しみの世界が広がっていく。そして、ワインを1杯から注文できるスタイル“バイザグラス”が定着し、お気に入りの味わいを探す冒険の旅が待っている。「風土」「食」「環境保全」「流行」をテーマに、カリフォルニアワインの魅力を4回にわたって紹介する。

 ※お知らせ:カリフォルニアワイン協会(本部・米サンフランシスコ)は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、4月1日から日本全国のレストランなどで開催していた『カリフォルニア・バイザグラス・プロモーション 2020』を中止しました。同協会は、カリフォルニアワインが買えるオンラインショップリストを開設すると同時に、バイザグラス・プロモーション特設サイトでもデリバリー、テイクアウト、ワイン販売を行っている参加店を紹介していますので、是非ご覧ください。

『おうちで楽しむカリフォルニアワイン オンラインワインショップリスト』は、こちら

『カリフォルニアワイン・バイザグラス・プロモーション 2020』(中止)の詳細は、こちら

【第1回】楽しむ×風土:複雑な地形と気象条件に向き合う

■気温や降水量情報を付加価値に

まるで宇宙基地のようなイメージの空間。何のための施設か分かるだろうか?(パルマッツ・ヴィンヤーズ提供)
まるで宇宙基地のようなイメージの空間。何のための施設か分かるだろうか?(パルマッツ・ヴィンヤーズ提供)
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 サンフランシスコ北部にあるワインの銘醸地、ナパ・ヴァレー。地中海性気候に加え、100以上の土壌変化がみられ、さまざまなワイン用ブドウ品種が栽培されている。

 その東に位置するマウント・ジョージのふもとに、建物18階建て分の巨大な地下空間が存在する。足を踏み入れると、SF映画に迷い込んだかのような錯覚を起こす。天井に投影されるグラフや熱画像。その下に24個のステンレスタンクが並ぶ。パルマッツ・ヴィンヤーズの醸造施設『ザ・ケイブ』の中心部となる発酵ドーム(写真上)だ。

 「計約26ヘクタールのブドウ畑は、3つの異なる標高に分散している。畑ごとに気温や土、品種は異なり、気象条件は毎年変化する。地球温暖化などの影響で環境の複雑さは増していく。そうした課題を克服するのはテクノロジーの力」

 最高経営責任者(CEO)で2代目のクリスチャン・ガストン・パルマッツさんは、類をみない醸造施設の価値を説明する。

大学ではコンピューターサイエンスなどを専攻したCEOのクリスチャンさん(左)。ワイナリーでは、シャルドネやソーヴィニヨン・ブラン、マスカット、カベルネ・ソーヴィニヨンなどを造っている
大学ではコンピューターサイエンスなどを専攻したCEOのクリスチャンさん(左)。ワイナリーでは、シャルドネやソーヴィニヨン・ブラン、マスカット、カベルネ・ソーヴィニヨンなどを造っている
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 創業者のフリオ・パルマッツさんは、心臓外科医として知られている。ナパ最古のワイナリーを1997年に買収し、再建した。医師ならではの発想で、技術と伝統を融合させたワイン造りを実現してきた。

 カーブは18階建ての高さを利用したグラビティ(重力)フロー設計で、選果から熟成まで重力を利用して作業する。ポンプを使わないため、渋みなどを左右する分子を壊さずに繊細さを生み出すことができる。自然の力を利用する原始的な仕組みを採用している。一方で、最先端システム『愛称:フェリックス(FILCS)』が発酵を監視する。センサーがタンク内を24時間計測している。醸造家がタンクの前に立つと、発酵の進み具合やタンク内の不均一な温度などが数値や画像で天井ドームに投影される。

 畑を見守るのは、地理情報システム『ヴィーゴー(VIGOR)』。航空機が週2回、赤外線カメラで畑を撮影する。樹木の水分や栄養状態、ブドウ果皮のクロロフィルなどをデータ化し、灌漑(かんがい)を調整し、収穫時期の判断に役立てているという。

テロワール(土地)とIT(情報技術)と人の感覚。総合情報がワインの個性を可視化していく
テロワール(土地)とIT(情報技術)と人の感覚。総合情報がワインの個性を可視化していく
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 クリスチャンさんは、「2つのシステム運用が、栽培から醸造までワイン全体に関わるビッグデータを蓄積する。気温や降水量といった情報もワインの価値になっていく時代を迎え、『同じ畑の同じブドウだが、少雨の年はこの味』といった楽しみ方もできる。人の知恵とテクノロジーを駆使することで、予測不能な将来の変化に対応し、高品質のワイン生産を続けることができる」と話す。

⇒パルマッツ・ヴィンヤーズのイノーベーションへの取り組み

■希少な山岳系“勇者のワイン”

 山カベ、という言葉を聞いたことがあるだろうか。山で造られるワイン、カベルネ・ソーヴィニヨンの通称だ。山の畑は機械の進入を阻み、手作業を余儀なくされる。収穫時期は11月にずれこみ、寒さは厳しい。人はそのような過酷な地でも、ワインを造る。

 ナパ・ヴァレーは東西を山脈に挟まれ、世界でも珍しい山のワインを生み出している。ワイナリーのマウント・ブレイブは、南西にあるマウント・ヴィーダーに畑を所有する。山カベの名手ともうたわれるクリス・カーペンターさんが腕をふるう。ブレイブ(勇敢な)と名付けられた畑は、標高約450~550メートル地点に広がっている。カベルネ・ソーヴィニヨンをはじめ、マルベック、メルローを栽培している。

 接客サービスなど担当するマルセロ・フレイタスさんは、「傾斜は最大30度近い。水源はため池だけ。火山性土壌のほか、古代に海底が隆起した山なので海洋性の土もある。土地はやせていて養分は乏しく、ブドウにとっても過酷な場所。だからこそ、骨格のしっかりしたワインができあがる」と指摘する。

朝から日照にさらされる畑。フォグライン(霧の上限)の下は霧に覆われていることが分かる。斜面の向きなどによって樹木の植え方も異なるという(マウント・ブレイブ提供)
朝から日照にさらされる畑。フォグライン(霧の上限)の下は霧に覆われていることが分かる。斜面の向きなどによって樹木の植え方も異なるという(マウント・ブレイブ提供)
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 ナパ・ヴァレーでは通常、太平洋の寒流の影響で早朝には湾から霧が流れ込み、正午前には消える。山の畑は霧の上にあり、朝から日差しが注ぐ。だが、標高が高いため気温は低い。果実は小さいが、ゆっくりと凝縮して糖分を蓄える。その結果、濃厚な果実味、際立つタンニンや酸…と、力強さを備えたワインに仕上がっていく。

 生産者団体、ナパヴァレー・ヴィントナーズの統計によると、州で収穫されるワイン用ブドウのうち、ナパ・ヴァレー産は約4%。そのうち、マウント・ヴィーダーで穫れるブドウは、ほかのワイナリーも含めて約1%にすぎない。

 クリスさんの信念は、「ワインは畑で造られる」。自然の厳しさと人の挑戦心を凝縮した趣が、多くのファンを魅了している。

ブルーベリーやブラックベリー、スパイスの香り。ピーマンのようなニュアンスも。マルセロさんは「納豆に合うかも」と驚きのアイデアを教えてくれた
ブルーベリーやブラックベリー、スパイスの香り。ピーマンのようなニュアンスも。マルセロさんは「納豆に合うかも」と驚きのアイデアを教えてくれた
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■AVAが伝えるソノマの多様性

 州北部の沿岸部に位置し、ナパ・ヴァレーと並ぶワイン生産地のソノマ郡。今年、郡内17番目となるウエスト・ソノマ・コーストAVAの誕生が見込まれている(3月25日時点の情報)。

 「ソノマ郡は広く、一口にソノマのワインといっても、沿岸部と内陸部では異なる表情を持つ。ウエスト・ソノマ・コーストは、海からの影響が強い“西のさらに西”。AVAは土地とワインの特長や関係性をより詳細に知ってもらうきっかけになる」

 AVA認定の申請に尽力してきたフリーマン・ヴィンヤーズ&ワイナリーのアキコ・フリーマンさんは期待を込める。甥のユーキさんの名前をつけた畑は、海岸線から約8キロの場所にあり、冷たい風が吹く。涼しい土地を好むピノ・ノワールやシャルドネの栽培に適している。

 アキコさんは、ウエスト・ソノマ・コースト最大の特徴は、「冷涼さ」だという。AVAに点在する20以上のワイナリーが手がけるのはやはり、ピノ・ノワールとシャルドネ。仏ブルゴーニュを思わせるエレガントさを漂わせる。ウエスト・オブ・ウエストは今、ブルゴーニュの銘醸地にちなみ“カリフォルニアのコート・ドール”として注目されている。

フリーマンの畑のひとつ、ユーキ・エステート。周囲はレッドウッド(セコイア)の木々に囲まれている(左)。ワイナリーは元々、ロシアン・リヴァー・ヴァレーAVAの西端に位置する。ブルゴーニュのスタイルを目指してワインを造っている
フリーマンの畑のひとつ、ユーキ・エステート。周囲はレッドウッド(セコイア)の木々に囲まれている(左)。ワイナリーは元々、ロシアン・リヴァー・ヴァレーAVAの西端に位置する。ブルゴーニュのスタイルを目指してワインを造っている
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 一方、同じピノ・ノワールとシャルドネでも、少し違う環境で造られるワインもある。

 ソノマ・コースト南部のワイナリー、スリー・スティックス。ソノマ5大畑と評価されるデュレルは、ソノマ・ヴァレーとカーネロスと2つのAVAまたがっていて、さらにはソノマ・コーストAVAなどにも包括されている。それだけ、多彩な魅力を持つユニークな畑として知られている。

 デュレルはやや温暖な畑だが、サンフランシスコ湾と太平洋の影響に左右され、1日の中でも刻々と気象が変化する。要因はペタルマ・ギャップという海から風と霧を運んでくる通り道だ。午前は日照が強く、気温も上昇する。しかし、午後になると一気に風が吹き込み、木々が強風にさらされることも少なくない。

 畑を担当するロブ・ハリスさんとワインメーカーのライアン・プリチャードさんは、地理の複雑性について声をそろえる。

 「複雑だからこそ、味わいのおもしろさにつながる。芽吹きが早ければ霜にやられてしまう危険がある。日照が強ければ、果実は乾燥する。いつ何をするか-を常に考えながら、土地の状態や気候、季節変化を読み解いていく。それが、ワインのおもしろさのひとつだろう」

畑が変われば土壌も変わる(写真左)。プレミアムワインを誕生させるスリー・スティックスの畑、デュレルに立つロブさん(右端)とライアンさん。ブドウは自社のワインに使用するほか、20以上のブランドに提供している
畑が変われば土壌も変わる(写真左)。プレミアムワインを誕生させるスリー・スティックスの畑、デュレルに立つロブさん(右端)とライアンさん。ブドウは自社のワインに使用するほか、20以上のブランドに提供している
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※取材は今年1、2月時点のものです。

★簡単メモ★

 カリフォルニア州には、大きく6つの生産地域がある。海岸線は1300キロメートルにもなり、海からの冷風や霧が海沿いの畑を冷やすため、沿岸部ではシャルドネやピノ・ノワールといった品種が栽培されている。内陸の畑では、カベルネ・ソーヴィニョンやメルローが完熟する。

 米国政府承認ブドウ栽培地(AVA)のうち、半数以上が州内に集中している。カリフォルニアワイン協会が公表している2018年統計によると、米国内市場で販売されたカリフォルニアワインの数量は、2.48億ケース。米国からのワインの輸出のうち、95%がカリフォルニア産。輸出数量は4170万ケースで、140カ国以上に出荷されている。

【おうちで楽しむカリフォルニアワイン オンラインワインショップリスト】

 世界的に高い評価を得ているカリフォルニアワイン。米国はイタリアやフランス、スペインに続いて世界第4位のワイン生産量を誇り、国内の約8割がカリフォルニア州から産出されている。バイザグラスはワインを1杯から注文でき、米国では気軽にワインを楽しめるスタイルとして定着している。

 今年元日に発効された日米貿易協定によって、米国産ワインの関税は段階的に引き下げられ、2025年には完全撤廃が予定されている。米国から日本に輸入されるワインの95%以上がカリフォルニア産。関税撤廃による小売価格の値下げなども見込まれている。消費者にとっては、多様で高品質なカリフォルニアワインを楽しむ機会が広がるとして注目されている。

 リッチな味わいからエレガントなワインまで、スタイルは実に多彩。自宅で過ごす時間が増える今、ゆっくりとお気に入りの1本を見つけてみませんか。

 カリフォルニアワインを選ぶなら、オンラインワインショップリストへ。

提供:カリフォルニアワイン協会

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