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“運ぶ” から “繋ぐ”へ。福岡の旅列車「ザ レールキッチン チクゴ」

 西日本鉄道(福岡)が運行する『THE RAIL KITCHEN CHIKUGO(ザ レールキッチン チクゴ)』が、2020年3月23日で1周年を迎える。「地域を味わう旅列車」として知られるこの列車では、ブランチ・ランチ・ディナーの3プランに合わせ、美味しい食事と筑後地方の穏やかな景色の移り変わりを、同時に味わうことができる。

外装から内装まで、全てが “チクゴ産”

 赤と白のチェック柄が目を引く可愛い車両は、テーブルクロスをイメージしており、ロゴをよく見ると様々な筑後地方の特産品が隠れている。動く列車内でくつろげるよう設計されたラグジュアリー × カジュアルなテーブルや家具類は大川産(大川市)。上を見上げると八女の竹を手編みで仕上げた美しい竹細工の天井に、客席の壁面には福岡出身のアーティスト鹿児島睦氏が沿線で見られる自然をデザインしたウォールパネル。所々に見られる城島瓦(久留米市)のウォールアートも高級感漂う存在感を放っている。

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 さらに、運転士や車掌をはじめ、キッチン・サービスクルーの制服には、福岡県の伝統工芸品・久留米絣(かすり)を使用し、この列車のためにオーダーメイドで制作。美しい色合いと独特の柄を楽しめる久留米絣アートは車内でも展示され、どこを眺めても通常の通勤電車とは一味違う雰囲気を醸し出している。

地域へのこだわりは食材や食器まで

 地産地消にこだわった四季折々の食材で提供されるメニューは、3ヶ月おきに一新される。料理監修には、食材を活かすことに長けたスペシャリスト二人を起用。アミューズ、野菜・肉のプレートは、全国に立ち寄りながら地方特有の食材の新たな表現を提案し続ける福岡在住の料理家、渡辺康啓氏。「クリエイティブな発想による料理」をコンセプトに、独創性に富んだ窯料理の名店エンボカを東京、軽井沢、京都で運営する今井正氏は、メインディッシュとなる旬野菜のピザを担当。

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 料理は全て、車内のライブキッチンで一皿一皿丁寧に盛り付けられて提供される。各席には生産地が明記されたメニュー表が準備され、「福岡の食材がここまで豊富だとは思わなかった」と驚く地元の乗客も多いそうだ。

ライブキッチンは見学も可能
ライブキッチンは見学も可能
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 「あまおう」使用のプレミアムスパークリングワイン、もしくは季節のフルーツジュースのウェルカムドリンクとアミューズを楽しみながら、本格的な食事がスタート。新鮮な野菜や果物で彩られる野菜プレートに続いて、肉のプレートでは、人気ブランド肉でもあるリバーワイルド・ハム・ファクトリー(うきは市)の豚肉「耳納(みのう)いっーとん」が主に使われている。

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 中でも注目すべきは、ライブキッチンの中でも特に存在感を放つ2台のピザ窯。列車内にピザ窯を装備するのは、なんと世界初の試み。筑後平野で収穫される小麦「ミナミノカオリ」を生地に使用し、生地の成形からトッピング、そして窯焼きまでを列車内で行っている。旬の野菜をふんだんに使用した、焼き立ての香り高くモチっとした食感のピザは、ここだけでしか食せない味わいと好評。

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 食事を彩る食器も、もちろん筑後産。野菜・肉のプレートには若手陶芸家として注目を集める日月窯(にちげつがま/うきは市)の福村龍太氏が作るスタイリッシュな皿を、ピザには、広松木工(大川市)が制作した木の温もりを感じるプレートを。アミューズや取り皿には、約340年の歴史を持つ翁明窯元(おうめいかまもと/東峰村)の小石原焼を使用するなど、徹底したこだわりを感じる。

お得なチケットを使ってショートトリップ気分

 列車は、通常特急で1時間の距離を2時間以上かけてゆっくりと進んでいく。あまり立ち寄る機会のないホームに降りて外の空気を吸ったり、ライブキッチンを見学してみたり。車掌さんのユニークなアナウンスやパフォーマンスを楽しんだり、沿線沿いの住人や、ホームで普通列車を待つ人々が手を振ってくれたり…。ちょっとしたショートトリップ気分を味わえるのも、列車の旅の醍醐味の一つ。

乗車記念のチケットには自ら改札鋏(はさみ)を入れることが出来る
乗車記念のチケットには自ら改札鋏(はさみ)を入れることが出来る
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 ブランチは天神から太宰府、ランチは天神から大牟田、ディナーは大牟田から天神へ運行(ランチ・ディナー8,800円/ブランチ3,300円 ※税込)。ランチ及びディナーを予約した乗客は、当日550円(大人 ※税込)で沿線(天神大牟田線・太宰府線・甘木線)乗り放題のチケットが購入可能だ(天神 - 大牟田間・通常片道1,040円/大人 ※税込)。

 この日、ディナーコース利用の門司在住のご夫婦は、このチケットを利用し「朝から出発して太宰府を散策し、柳川では雛祭”さげもんめぐり”を鑑賞してきました。そのまま雰囲気の良いカフェでランチを楽しんで、大牟田まで来ました。帰りは食事をしながらゆったりと帰れるのがいいですね。地元の食材を使った食事も、本当においしく頂きました」(60代男性)と、大満足の様子。

ディナーコースの車内から見た景色。田園に広がる美しい夕日
ディナーコースの車内から見た景色。田園に広がる美しい夕日
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 筑後沿線には、車内の天井も手掛け、籃胎(らんたい)漆器をモダンなアイテムで提案する久留米の「井上らんたい漆器」や、東京・銀座にも店舗を持つ大川の「庄分酢」本社、SNS映えする建物とデザートで話題となった大牟田のカフェ「Rooth2-3-3」など、観光スポットはもちろん、お土産から食事まで、魅力的な場所が多く点在している。列車内には、沿線のスポットをお客様にもっと知って頂きたいと、スタッフが手書きで作成した「チクゴ案内」も用意されているので、是非参考にして欲しい。

上段左:井上らんたい漆器、上段右:庄分酢、下段:Rooth2-3-3
上段左:井上らんたい漆器、上段右:庄分酢、下段:Rooth2-3-3
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地元に根付いた企業だからこそ可能だったプロジェクト

 列車内で目にするもの、触れるもの、口にするもの、その全てが”福岡生まれ、福岡育ち”の列車「ザ レールキッチン チクゴ」。

 「筑後地域には様々なエリアや資源があり、それを一つに合わせて私たちは『チクゴ』と表現し、その魅力や生産者さんの想いをお客様へお伝えしたいと思っています。知れば知るほど新しい発見がある『チクゴ』の人々やモノ、コトと関わりながら、地域と共にお互いステップアップできるような列車として育っていければと考えています」(西日本鉄道担当者) 

 長年、福岡に生活する人々を支え、福岡を知り尽くした西日本鉄道だからこそ、沿線の利用者はもちろん、様々な生産者との信頼と協力の元に運営されている。そんな本プロジェクトの今後の展開や想いを聞いてみた。

 「鉄道事業者としても、沿線全体の将来を見据えて、それぞれの地域を活性化したいという使命感からスタートしたプロジェクトになります。当初は、沿線地域や県内の皆様に向け、目的地へ“運ぶ”ではなく、“繋ぐ”を担っていきたいという想いでアプローチさせていただいていました。運行を始めて1年、地元の方へも徐々に浸透してきたのを感じる今、今後は沿線住民の皆様が地域に誇りを持って、県外の方々にもその魅力を知っていただけるよう、引き続き、お客様と地域を繋(つな)ぐ存在となるよう展開していきたいです」(西日本鉄道担当者)

手作りの「チクゴ案内」を手にした各クルーの皆さま。制服にも注目を
手作りの「チクゴ案内」を手にした各クルーの皆さま。制服にも注目を
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運行状況・予約については公式HPにてご確認ください。

西鉄グループ

提供:西日本鉄道株式会社

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