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相次ぐ巨大台風でも開いた活路 「多重性」がつくる災害に強い道路ネットワーク

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 昨年9~10月に日本列島を相次いで襲った観測史上最大級の台風15号と19号は、首都圏に甚大な被害をもたらした。大規模停電や家屋倒壊、河川の決壊など影響は広範囲に及び、首都圏の道路網も機能麻痺(まひ)状態に陥りかけた。だが、ネットワークの「多重性」を生かした復旧活動などで早期に迂回(うかい)ルートを設定し、救援・救助に不可欠なライフラインの確保に成功した事例がある。災害列島の日本に求められる強い道路網の在り方を探る。

圏央道に迂回して成田空港へ

 台風15号が首都圏を直撃した昨年9月9日午後2時過ぎ。都内と空港を結ぶリムジンバスの中核拠点、東京シティエアターミナル(東京都中央区)内に「成田空港線の運行を再開します」という放送が流れると、待機していた数百人の利用客に安堵(あんど)の表情が広がった。

 運行会社の東京空港交通の伊東祐一郎常務は「朝早くから待っていた人もいて申し訳ない気持ちだったので、再開できてほっとした」と振り返る。成田空港へ向かう鉄道よりも3時間近く早い再開だった。

 台風15号はこの日午前5時前に千葉市付近に上陸。関東南部は記録的な暴風となり、千葉市の最大瞬間風速は未明に57.5メートルと同地点の観測史上最高を更新している。成田空港線が走る東関東道も5時から通行止めになり、1日約600の通常便が運休を余儀なくされた。

 午後に風は弱まったが、東関東道は倒木や飛来物に加え、料金所などが停電し、想定よりも復旧までに時間がかかった。そこで浮上したのが都心から北東の茨城方面に延びる常磐道を経由し、つくばジャンクション(JCT、つくば市)で環状路の一つ首都圏中央連絡自動車道(圏央道)に乗り換えて成田方面に南下する迂回ルートだ。

 圏央道は平成27年に神崎インターチェンジ(IC、千葉県神崎町)~大栄JCT(成田市)区間が開通し、常磐道から成田空港まで接続。台風15号時は東関東道に比べ被害が少なかったため、NEXCO東日本は復旧を優先し、空の玄関口へのアクセスを確保できると判断した。

 情報収集を進めていた東京空港交通も迂回ルートとして見いだし、午後2時40分に臨時便がターミナルを出発した。約2時間後には成田空港に到着、この日は最終的に計40の臨時便を運行し、空港利用者が立ち往生する事態を防いだ。

 これに対し、東関東道が成田JCTまで開通したのは、リムジンバスの運行再開から7時間以上経過した夜10時10分。伊東常務は「圏央道がなければ、早期復旧はできなかった。ネットワークの多重性が災害対策として有効だということを痛感した」と語る。

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1日強で約6.5キロメートルを啓開

 圏央道や常磐道など首都圏の道路ネットワークは、昭和38年に計画した「3環状9放射」構想のもと順次整備されてきた。東京と地方を結び都市間の高速移動を担う「9放射」を円状の「3環状」で有機的に結び、都心に集中しがちな交通を分散して渋滞を解消する狙いだ。

 東関東道や東名高速、東北道など放射方向は昭和60年代までに骨格ができる一方、圏央道、東京外かく環状道路(外環道)、首都高速中央環状線という3つの環状路の整備が本格的に始まったのは平成に入ってから。中央環状線は計画延長すべて開通しているが、今年1月時点でも圏央道は開通済みが90%、外環道は60%にとどまる。災害の多発する日本で、環状路のネットワーク強化が改めて問われている。

 さらに、災害時は多重性とともに、国道などを含めた復旧活動が焦点になる。

 台風19号が関東を襲った昨年10月12日、東京都━山梨県間をつなぐ交通ネットワークが寸断された。記録的な大雨で中央自動車道は土砂が流れ込み、通行止めに。平行して走る国道20号(甲州街道)も被災し、通行できなくなった。JR中央線を含め寸断の期間は16日まで5日間にわたり、通勤・通学で約1万4000人の足に影響があったとされ、物流も停滞した。

 山梨方面は山がちな地形に主要幹線が走るため、土砂崩れや倒木など大雨の被害が集中した格好だ。

 国土交通省は同月15日、NEXCO中日本やJR東日本・自治体などが参加する「国道20号等災害時交通マネジメント検討会」を設置。都心から東名高速で静岡方面に向かい、御殿場市で国道138号線に乗り換えて北上し、富士五湖道路からなる広域迂回ルートへの誘導や道路混雑状況の情報発信などを連携しながら実施した。

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 一方で、早期復旧にも注力した。国道20号は八王子市南浅川町━相模原市緑区(約6.5キロメートル)の区間が、土砂や流木で29カ所が被災。これに対し、国交省は地方整備局の職員を中心とする「緊急災害対策派遣隊(TEC-FORCE)」を現地自治体に派遣して情報収集にあたるとともに、協力する企業3社に土砂の撤去などを要請し、13日早朝から最低限の処理で救援ルートを確保する「啓開」作業に着手。翌14日午前中までの1日強で啓開は完了し、午後からは応急復旧工事を始め、全12社の協力を得て18日午前6時に通行止めを解除している。

 国交省関東地方整備局は「台風19号は迂回ルートの工夫や復旧の努力で、ライフラインを維持できた。人やモノの流れが寸断しないよう、道路ネットワークのいっそうの充実が必要だ」と話した。

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提供:国土交通省関東地方整備局

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