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【本ナビ+1】永青文庫副館長・橋本麻里『京都でお買いもん 御つくりおきの楽しみ』 ただ一人のどストライクを

『京都でお買いもん 御つくりおきの楽しみ』入江敦彦著
『京都でお買いもん 御つくりおきの楽しみ』入江敦彦著
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 ■『京都でお買いもん 御つくりおきの楽しみ』入江敦彦著(新潮社・1500円+税)

 「御つくりおき」とは、いわゆるオーダーメード、ビスポーク、おあつらえと同じ-だけれども「日常から遊離しない、地に足のついた方法論」だと著者はいう。サイズも使い勝手もこれ以上はない、しかし再入手不可能な「理想のティーポット」の割れた蓋を、オリジナルとは異素材の錫(すず)で、質感まで再現する。真っ二つに割れた半分だけの茶碗(ちゃわん)(江戸時代)に、木で新たにつくった「もう半分」を漆で継ぐ。銅の茶筒に棗(なつめ)と茶筅(ちゃせん)入れを一体化させ、さらに保温マグまで仕込んだ「散歩茶筒」で、「いますぐここでお薄(うす)一服」を実現する…。

 たとえばお茶まわりの品をピックアップするだけで、本当に多彩な手練手管が登場する。いずれも著者が深いリスペクトをもって職人に依頼し、意気に感じた職人が、惜しみなく技術とアイデアを注ぎ込んで難問を解決する、という筋立てだ。既にあるものを買ってくるより、時間とお金は余分にかかるし、「使いこなす」までに時間と訓練を要するものもある。だがその納得と愛着は、他に替え難い。

 かつてはこういう「モノを使いこなせる」「職人と協働できる」依頼主が大勢いて、そのおよそ一般性のなさそうな好みと課題解決をヒントに、一般向けの新しい商品が生まれる、というサイクルがあった(エルメスのバーキンだってそうだ)。マーケティングがすべて、ではないのだ。

永青文庫副館長で美術ライターの橋本麻里さん(斎藤良雄撮影)
永青文庫副館長で美術ライターの橋本麻里さん(斎藤良雄撮影)
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 そしてもし本書を読んで「自分はこんなのほしくないけど」と思った人は、適性大、かもしれない。何しろ「御つくりおき」は「ただ一人のどストライク」であって、「100万人向けの“そこそこ”」ではない。「なんか違う」と思ったあなたにはもう、確かな、一つだけの正解がどこかにある。あとはいますぐ職人に会いに行くだけだ。

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