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【記者発】新型肺炎とメディア 神戸総局・宝田良平

新たに新型コロナウイルスによる感染が確認された医師が勤務する「済生会有田病院」=14日午前、和歌山県湯浅町(渡辺恭晃撮影)
新たに新型コロナウイルスによる感染が確認された医師が勤務する「済生会有田病院」=14日午前、和歌山県湯浅町(渡辺恭晃撮影)

 記者になって最初に指導されたのは「分かりやすく書け」ということだった。敏腕だった他社の先輩からは「この世に30行(12字詰め)で書けない事象はない」とも教わった。

 分かりやすさとはすなわち、簡略化だ。臆測や見立てを排し事実を淡々と記す。いつ、どこで…という「5W1H」のみを突き詰め、余分な肉を削る作業だ。

 日々忙しい読者に短時間で効果的にニュースを伝えるために、簡略化には大きな意味がある。

 だが、よく分からない事柄には対応できない。そもそも分からないことを、分かりやすくすることは不可能だからだ。

 こうしたメディアの性質を踏まえて、昨今の新型コロナウイルス問題を眺めてみると、これほど相性の悪い相手もいないのではないか。中国発のこのウイルスは1月の時点で、文字通り未知のものだった。増加の一途をたどる感染者・死者数、感染ルートの推測、さらに「マスクが不足」「中国旅行客が激減」と関連現象も含めて連日、洪水のような報道がなされている。

 それは一面で、多角的な切り口によりウイルスの輪郭を何とか可視化しようという試みなのだが、不分明なものへの不安や恐怖を、大量の情報で覆い隠そうとしているようにも見える。

 大阪府の吉村洋文知事は新型ウイルスに関する国の情報開示が不十分だと批判し、より踏み込んだ府独自の公表ルールを定めたが、先日の囲み取材では「メディアがとにかく過熱して(感染者の)個人情報を特定しようとし、(入院先の)施設をとらえようとする。それに何の意味があるのか。それでは情報が出せなくなる」と報道のあり方を非難していた。

 感染者の人権と、詳細な情報公開の要請は、ときに衝突する。すべてはケース・バイ・ケース、利害調整の問題だ。

 こういう場面で分かりやすい基準は立てようがなく、簡略化して報じることも本来無理なのだ。

 そんな、ああでもないこうでもないことは、30行ではとても書けない。あの先輩がみたら、「脈絡がないだけや」と一蹴されそうだが…。

【プロフィル】宝田良平

 平成13年入社。大阪社会部時代は刑事司法分野を中心に、「大阪維新の会」が掲げる大阪都構想をめぐる動きも取材した。今年2月から神戸総局勤務。

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