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求められる平穏な世界 「ハマスホイとデンマーク絵画」 

ヴィルヘルム・ハマスホイ 「背を向けた若い女性のいる室内」 1903-04年 油彩 ラナス美術館蔵(c)Photo: Randers Kunstmuseum
ヴィルヘルム・ハマスホイ 「背を向けた若い女性のいる室内」 1903-04年 油彩 ラナス美術館蔵(c)Photo: Randers Kunstmuseum

 童話作家のアンデルセンを生んだ北欧のデンマーク。同国を代表する画家たちの絵画を集めた「ハマスホイとデンマーク絵画」展が、東京・上野の東京都美術館で開催されている。国連の「世界幸福度ランキング」で何度も1位に輝き、「幸福の国」といわれている国から届いた穏やかな作品は、見るものに安らぎを与えてくれる。(渋沢和彦)

 20世紀初頭のフランスでフォービスムやキュビスムなど新しい美術が勃興した時代、デンマークではまったく異なる美術が花開いていた。それを代表する画家が、世紀末から20世紀前半に活躍した巨匠、ヴィルヘルム・ハマスホイ(1864~1916年)だ。その作品は「室内-開いた扉、ストランゲーゼ30番地」のように、静けさに包まれている。開かれたドアと奥に広がる部屋。床には人が暮らす黒い痕跡が残るが、人の姿も家具もない。まるで引っ越してしまったように閑散としている。

 タイトルにあるストランゲーゼ30番地は、ハマスホイ夫妻が1898年から1909年まで暮らしたコペンハーゲンの旧市街の住所。17世紀建造の古風な建物で生活したことで、室内画の名作が生まれることとなった。約400点のうち3分の1は室内画だという。

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 室内にいる人物も描いているが、後ろ姿が多い。「背を向けた若い女性のいる室内」などのように、背を向けていて表情が見えないため、謎めく。

 灰色を基調としたメランコリックな色彩が特徴。目に見えるすべてを完璧に描いているわけではない。脚色し、現実の風景とは違うものもある。それによって不安を感じる人もいるかもしれない。

 しかし、上品で静謐(せいひつ)な作品はいつしか「北欧のフェルメール」とも呼ばれ、たたえられている。実際、彼はフェルメールの作品を研究し、「手紙を読むイーダ」(不出品)を制作している。これもストランゲーゼの自宅が舞台で、夫人をモデルにした。

 ハマスホイが登場する前のデンマークは、プロイセンとの戦争に敗れ、19世紀前半は経済的に困窮していた。1860年代には愛国的な歴史画がもてはやされていたが、それに対する反発から、日常的な題材が求められていったという。80年代以後はデンマークを代表する画家たちによる家庭的で身近な場面をモチーフにした作品が人気を博した。

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