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【ビブリオエッセー】読後の気分はメロンソーダ 「早朝始発の殺風景」青崎有吾(集英社)

 「青春は気まずさでできた密室だ-」。帯にあったそのフレーズに、たまたま通りかかった私は心をくすぐられ、気がつくとその本は私の手にそっと包まれていた。

 本のタイトルは『早朝始発の殺風景』。淡い青緑色の表紙で、電車の車内にいる二人の男女の絵が描かれている。そんな爽やかそうな本がミステリー小説の棚に置かれていたことに、まずは目を疑ってしまった。

 本と同じ題名の一編は、ガラガラの始発電車の同じ車両に乗り合わせた、同じ高校に通う同級生の男女が、お互いに「なぜ始発に乗っているのか」という疑問の謎を解き明かす物語だ。ゆったりとした空気感の中で交わされる言葉には重いものがあり、読むのを一向にやめられない。

 始発の電車で、放課後のファミレスで、観覧車のゴンドラの中で…。次々に設定の変わる各編を読み進めていくうちに、なんとも爽やかな語り口だけど一話一話にドキッとするようなオチや台詞(せりふ)が出てきたり、思わず笑ってしまうようなやり取りがいくつもあって、全編を楽しむことができた。各編が徐々に混じり重なり合っていくエピローグもとても良かった。

 それぞれに不器用な高校生たちが、青春という密室の中で、小さな謎と会話を通じて少しずつ変わっていく物語に尽きない魅力を感じ、気がつくと最後のページをめくっていた。

 読み終えた後、第二編の題名にもなっているメロンソーダを久しぶりに飲みたくなった。女子高生たちがいつものファミレスで飲んでいたメロンソーダを。

大阪府藤井寺市 岡崎杏奈15

 【ビブリオ・エッセー募集要項】本に関するエッセーを募集しています。応募作品のなかから、産経新聞スタッフが選定し、月~土曜日の夕刊1面に掲載しています。どうか「あなたの一冊」を教えてください。

 投稿はペンネーム可。600字程度で住所、氏名、年齢と電話番号を明記し、〒556-8661産経新聞「ビブリオエッセー」事務局まで。メールはbiblio@sankei.co.jp。題材となる本は流通している書籍に限り、絵本、漫画も含みます。採用の方のみ連絡、原稿は返却しません。二重投稿はお断りします。

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