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【ビブリオエッセー】背中を押してくれた夫婦の物語 「あい 永遠に在り」高田郁(ハルキ文庫)

 私は葉室麟さんの時代小説が好きです。この本を読んでいると、登場人物が、誠実さやひたむきさ、信じるということなど人間のよいお手本を示してくれていて、葉室作品を読んでいるような気持ちに何度かなりました。

 上総の貧しい農村に生まれた主人公、あいと夫の医師、関寛斎。幕末から明治へ、激動の時代を生きた夫婦の物語です。佐倉順天堂に学び、乞食寛斎と呼ばれるほど苦労しながら医の道を貫いた寛斎。その人物に惚れこみ、「この国の医療の堤に」と惜しみない援助を続けたヤマサ醤油の七代目、濱口梧陵が紀州の津波被害から村人を救った「稲むらの火」の梧陵だという文章が出てきたとき、和歌山と千葉が頭の中ですぐには結びつきませんでした。調べてみると寛斎も梧陵もあいも実在の人物と知りました。

 徳島藩の侍医をつとめ、戊辰戦争では敵味方の別なく負傷兵の治療に奔走。その後、病院創設などに尽力しますが自らは一介の医師として地域医療に携わっていたある日、息子のいる北海道へ入植を決意します。寛斎七十三歳、あい六十八歳。後に陸別町開拓の祖として尊ばれることに。今の七十三歳ではなく明治の七十三歳ですよ。

 私は最近、体力の衰えを感じ、シニア自然大学校のアシスタントを打診されたときも一度は固辞しましたが、この本を読んで思い直しました。大げさかもしれませんが寛斎とあいの生き方に大きな力をいただいた思いです。今春から、新しい講座生が楽しく受講していただけるよう頑張るつもりです。

  堺市北区 住川章雄 67 

 【ビブリオ・エッセー募集要項】本に関するエッセーを募集しています。応募作品のなかから、産経新聞スタッフが選定し、月~土曜日の夕刊1面に掲載しています。どうか「あなたの一冊」を教えてください。

 投稿はペンネーム可。600字程度で住所、氏名、年齢と電話番号を明記し、〒556-8661産経新聞「ビブリオエッセー」事務局まで。メールはbiblio@sankei.co.jp。題材となる本は流通している書籍に限り、絵本、漫画も含みます。採用の方のみ連絡、原稿は返却しません。二重投稿はお断りします。

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