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【書評】岐阜女子大教授・助川幸逸郎が読む『如何様(イカサマ)』高山羽根子著

『如何様(イカサマ)』高山羽根子著
『如何様(イカサマ)』高山羽根子著

■真贋を峻別する物の見方

 太平洋戦争が終わり、出征していた絵描きが帰還する。当人であることを証明する書類一式を、彼は携えている。にもかかわらずその風貌は、戦地に赴く以前とはまるで別人であり、性格も一変していた。半面、再開した画業を見ると、「当人にしかわからない事情」に精通しているのも間違いない。彼は替え玉なのか。それとも-。

 高山羽根子はこれまでにも、認識という営みの限界を問うてきた。最初に芥川賞にノミネートされた『居た場所』は、「私たちを支える視えない基盤」をテーマとする。次いで同賞の候補にあげられたのが『カム・ギャザー・ラウンド・ピープル』。そこでは、「視えないゆえになかったことにされたもの」に焦点が当てられていた。

 本物と偽物を峻別する物の見方-そこにはらまれる非倫理性を、『如何様』において高山はあぶり出す。この小説の語り手は、画家の身に何が起きたかを探る女性記者だ。彼女は捜索を進める中で、こんな感慨にとらわれる。「女性の美しさをうたった詩は偽物で、美しい女性だけが本物なのだろうか。それとも女性は美しい詩を作るための材料にすぎないのだろうか」

 対象そのものに向きあうならば、それが本物か偽物かは問題にならない。本物には高い値段がつき、利益を生む。そうした功利的価値観の対象への押しつけと、真贋(しんがん)という観点から物事をとらえる構えは直結する。

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