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【書評】フリーアナウンサー・松本秀夫が読む『ぼけますから、よろしくお願いします。』信友直子著

『ぼけますから、よろしくお願いします。』信友直子著
『ぼけますから、よろしくお願いします。』信友直子著

■自分に重なる介護の悲喜

 読みながら何度涙を拭っただろうか。私自身、認知症と診断された亡き母を、7年にわたって同居介護した経験があり、嫌でも当時を思い出したのだ。

 一人娘でフリーの映像ディレクターである著者は、広島県呉市の実家に帰省するたびに、ムービーカメラの撮影練習も兼ねて、まだ元気な両親の動画を長年撮り続けていた。だが、母のアルツハイマー型認知症の発症で全てが変わっていく。90代の父が、認知症の母を支える超老老介護。母は今までできていたことが少しずつできなくなっていくことにいらだち、父は彼女を懐深く包み込もうとするものの、耳が遠い。

 いつ破綻してもおかしくないような生活を救うため、東京在住の著者は離職して帰郷すべきか悩むが、「あんたはあんたの仕事をしんさい」と父に諭される。やがて両親の動画をドキュメンタリーとして公開することを思い立つ。情けない姿を世間にさらすことになるのではないかという迷いを吹っ切らせたのは、娘を思う両親の計り知れない愛情と、「あんたはわしらを悪いようにはせんじゃろ」という全幅の信頼だった。

 全編でつづられる、決して通り一遍でない家族の絆が心を打つ。次第に症状の進む母を見てただ嘆くのでなく、その姿から学んだことは? 母の深層心理とは? ひいては認知症を「神様からのプレゼント」とまで言えてしまうのはなぜか? 葛藤しながらも老いた両親に背中を押され、信念を貫いていく著者の生きようが悔しいほどに勇ましい。介護の混沌をつぶさに描きながら、あくまでポジティブだから暗さもなく読める。

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