PR

ライフ ライフ

【第162回芥川賞】「受賞作なしをなんとか避けられた」 島田雅彦選考委員が講評

 --古川作品のどこが評価されたのか

 「すでに候補4回目で、彼の作風については多くの選考委員が把握しております。例によって(長崎県の)平戸とおぼしき町を中心としたサーガ(叙事小説)の一つです。今回は草刈りという誰もやりたくない退屈な作業に若手が嫌々参加するのが現在時点の話で、それで多少語り口が読みやすいものになっており、そのことについて肯定、否定が分かれました。今作の特徴はその土地に根付いた歴史的重層性を巧みにすくい上げていて、単調な草刈りの合間に時空を超えたエピソードを織り込み、これまでの古川作品とはかなり毛色が変わっていた。時間的な複層性が入ってきたことが非常な評価の対象になりました。ただ、そうした歴史的なできごとと、現在時点の草刈りに参加している人たちの意識の関連付けが今一つ弱いのではないかという指摘もありました」

 --千葉作品については

 「一種のカミングアウト小説で、そうしたLGBTQというテーマ自体、昨今は多くの人が手掛けるようになっています。その中できわめて私小説的、自伝的なスタイルで、自らの性的指向にからめて、修士論文を準備している大学院生が仏哲学者のドゥルーズをはじめとする生成の哲学をいかに消化していくかということと、自分の多様なアイデンティティーといいますか、何かに随時生成変化していくような“わたし”というものの発見がうまく組み合わされていることへの評価は高かった。しかし昨今多くの人が自伝的小説を書く中で、これが誰もがすなる自伝的小説の定型をはみ出すようなパワーを持っていたかというと、ややネガティブな意見もあった」

続きを読む

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ