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【書評】ジャーナリスト・伊豆村房一が読む『アリババ 世界最強のスマートビジネス』ミン・ゾン著、土方奈美訳

『アリババ 世界最強のスマートビジネス』ミン・ゾン著、土方奈美訳
『アリババ 世界最強のスマートビジネス』ミン・ゾン著、土方奈美訳

■中国「IT巨人」の実力解明

 中国のすごさの一端を知る思いがする。本書出版のタイミングも絶妙だった。原本の出版は2018年だが、この翻訳本が出版された(19年10月)直後、11月にアリババの香港証券取引所への上場が実現した。かつて香港上場を断られた経緯があり、14年に米ニューヨーク市場に上場した。今回の香港上場はニューヨーク上場と重複上場になるが、海外市場に上場する中国企業の「回帰」を促す中国政府の思惑とも合致する。

 本書の副題にある「スマートビジネス」が原本のメーンタイトル。副題には「アリババ成功の何たるかが企業戦略の未来を明らかにする」とある。そこに本書の意図、狙いがズバリ表現されている。序文でアリババ創業者のジャック・マー氏は読者にこう呼びかけている。「デジタルエコノミーは全人類が創(つく)りあげる、すばらしい未来の一部をなす」「今日は苦しい。明日はもっと苦しい。だが明後日はすばらしい日になる」「みなさんが創るすばらしい世界を心待ちにしている」

 アリババの創業は1999年。その年にマー氏が小人数で立ち上げたIT企業は、この20年、紆余(うよ)曲折を経ながら、中国トップ企業の一角にのし上がった。その成功の秘密は何か。本書はこの中国「IT巨人」の真の実力を解明している。

 著者のミン・ゾン氏は欧州の経営大学院INSEADの准教授だったときにマー氏にスカウトされた。マー氏は彼を「総参謀長」と呼び、最高戦略責任者として2017年まで10年以上マー氏とともにアリババの驚異的な「IT巨人」への大躍進に貢献した。IT企業の独自路線を突っ走ってきたアリババという企業の解明に、これほどふさわしい人物はいない。

 ゾン氏はアリババ独自の「スマートビジネス」が、これからの世界を制覇するという。核心は中国流の陰と陽の融合だと説く。IT流に言えば、陽とは「ネットワーク・コーディネーション」、陰とは「データインテリジェンス」。2つの創造的な組み合わせによってスマートビジネスは成り立つ。アリババはまだその途上にあるという。まさに「開けゴマ」の気合で未来を開くIT企業を知るには打って付けの解説書といえよう。(文芸春秋・2100円+税)

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