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【書評】書評家・西野智紀が読む『聖者のかけら』川添愛著

■生きていく知恵秘められ

 時は13世紀、カトリック修道士で死後、聖人に列せられた聖フランチェスコの死没から四半世紀後のイタリア・アッシジ近郊。27歳の若き修道士ベネディクトは、院長から密命を帯びて、14歳のときから過ごしてきた修道院を不承不承離れることとなった。

 その命令とは、修道院にもたらされた「次々と奇蹟(きせき)を呼び起こす聖遺物」の正体解明。しかしながら彼は、人一倍信仰心は強いものの、全くと言っていいほどの世間知らずの青年だった-。

 本書は史実を下敷きに、ベネディクトが聖遺物をめぐる大いなる謎と複雑な宗教社会のうねりに巻き込まれていく歴史ミステリーだ。著者は言語学や情報科学の専門家で、独特かつ幅広い著作活動を行っている。

 とにかく胸がときめく設定が満載の小説だが、当然ながら道理に疎い素直なお坊ちゃんだけでは話は転がっていかない。そこで本書にはもう一人、彼の協力者となる探偵役が登場する。それがピエトロだ。

 この男のキャラクターがなかなか強烈。まず、教会の司祭でありながら、裏では聖遺物を見つけてはこっそり売りさばいている。頭の回転が速く口が達者で、アッシジ周縁のみならずイタリア各所に幅広い人脈ネットワークを持つ。自分の利益優先で最大限効率的に行動し、神の働きかけは基本ありえないと考えている。そう、ベネディクトとは正反対の世間擦れしたリアリストなのである。

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